清水文太 × Hiroki Ikegawa(Crossfaith)「知るを知る」vol.4

NeoL



COVID-19やBLACK LIVES MATTERなど社会がドラスティックに変化をしている中、情報の取捨選択や知識の獲得は生きるための大きな武器となる。私たちはどのようなツールを使って、どのように情報を取捨選択していくべきなのか。さらには、「知る」という行為やそこに込められた意味とはなにか。6月12日、アーティストの清水文太とCrossfaithのベーシストであるHiroki Ikegawaがホストとなり、オンラインワークショップ「知るを知る」を文喫六本木にて開催。(https://www.neol.jp/culture/98332/)「知るを知る」では、事前に参加者に募ったアンケートの答えをもとに参加者とホストが一緒になって「知る」について議論し、それをインスピレーションに各自が音をレコーディング。ワークショップ終了後、回収した音源を用いて清水が音楽を作成し、読書のためのスイッチミュージックとして参加者に提供され流というものだ。NeoLではこのトークの模様を記録、4回にわたる連載としてお送りする。最終回となる第4回では、ワークショップ参加者とのディスカッションの続きと「知る」という感覚がどういう音になるのかという試みにチャレンジ。完成した音源はこちら(Spotify)から聴くことができる。



清水文太「僕は16番さんが気になります。この人は何を考えているのかなって」

16番「こんばんは! 好きな本の理由は、まだ完全に自分の中で理解できているわけではないんですけど書いてみました」

Hiroki 「それでも好きであることは変わらないからいいと思うよ。子どもの頃の好きな本に聖書と書いてあるけど、俺も小学校くらいから読み始めて理解できていないエピソードとかたくさんある。だけど読むと考えさせられるなと思う。なんで聖書が好きなの?」

16番「自分が通っていた中高がキリスト教の学校だったんです。そこで毎日礼拝で聖書に触れていたし、キリスト教の授業もありました。当時は空想の世界みたいであまり信じられなかったんですけど、いまになって、色々考えるうえで聖書に助けられることが増えたんです。最近飼っている犬が一匹死んじゃったんですけど、そのときも聖書に助けられたし、今回の黒人差別の問題も聖書を読んでて引っかかるところがあったり、勉強したことは間違っていなかったなと思いました」

清水文太「なるほど。じゃあ、知ることについて訊きたいんだけど、知らないふりや知ったかぶりに対して恐怖があったり、後悔したことがあったのかなって」

16番「自分の話になるんですけど、ネットの誹謗中傷で色々あって……」

清水文太「そっか。知ることが恐怖というのはすごくわかる。あと、自分も周りの人から誹謗中傷を受けたこともあって、その時はすごく傷ついたけど、時間をかけて知っていくほどその人がなんでそんなことを言ったのかがなんとなく理解できるようになった。本当に悲しくて辛いことはたくさんあるけど、そこから学べることは必ず自分の糧になると思う。無理せずに辛かったって信頼できる人に話してみるのもいいと思うし、いまは恐怖だけど、いつかは楽しみともなるんじゃないかなって思う」

16番「自分は弱くて、病院で鬱と診断されたのもあって、楽しかったなって思えるのは時間がかかるなって思います」

Hiroki 「ネットの誹謗中傷するやつらって、俯瞰して見たら卑怯なやり方であなたを攻撃しているだけ。もちろん傷つくだろうし、辛い気持ちはわかる。正直、俺も自分への誹謗中傷を見たときは食らうしね。でも彼らと同じ次元で戦う必要はないし、もう一個上の視点から見たら、あなたのことを愛している人の方が多いと思うよ。あと、可能なら自分のことを愛すことができたらいいと思う。大丈夫だよ」

16番「ありがとうございます」

清水文太「あなたは弱くないと思う。本当に弱い人は、ここに参加してないと思うし、ちゃんとこうやって話して伝えてくれている。優しいから傷つくし、人の言葉に対しても敏感なんだ。いま鬱などで辛いこともあると思うけど、必ず気持ちが晴れることがあるから、そしたらもっと楽しいものが見えると思う。それまでは無理せずゆっくり休んで、知ることは恐怖かもしれないけど、少しずつ消化していって、時間をかけて変わっていってほしいな」

16番「話せてよかったです。ありがとうございました」





Hiroki 「こちらこそありがとう。8番さん、知ることが謙虚になることというアンサーが面白いけど、どういう意図なんだろう」

8番「こんばんは。知ることは言葉からだけじゃないと思うんです。私は、普段コンテンポラリーダンサーとして身体を使った表現をしているんですけど、ダンスはやっぱり人と比較しなきゃいけない部分があって、そこから自分を知ることもあります。自分の身体について知るようになると、表現していく際に勢いや負けん気だけでなくて、より自分に対してどうあるべきかという部分にたどり着ける実感があるんです。そういう状態になれると自分に謙虚になれます。勉強して知識を獲得すると自信がつくけど、同時にまだまだ知らないこともたくさんあることにも気付けて、さらに聞くことにも繋がると思うんですよね。辞書でも言葉でも一つ新しいことを知ったとしても、必ずそこには穴がある。『知る』という行為を通して、そこも忘れないようにできるのかなと思います」

清水文太 「『自分はこれを知っているけど、あれはどうなんだろうか』って一歩引いて見てみるということはとても共感できるし、謙虚さは重要。以前、僕がスタイリングした子に『文太くんって謙虚だけど図々しいよね』と言われたことがあって(笑)。でも、この姿勢はこれから大事だと思うし、知ることにも繋がる話かなって」

Hiroki 「(笑)。なるほど。図々しさと謙虚さが対義語ではないってことだよね。でも、やっぱりそのバランス感覚が大事そうな気がする。この辺りでレコーディング行きましょう!」

清水文太「『知る』という音ってなんだろうと考えて、送ってみてください」

参加者各々が“知る”についての音をレコーディング

清水文太「僕にとってはこれが知るという感覚に近い音楽です。僕らの生き方は僕ら自身が決めることだから、人が言ったこと全てに従う必要はない。みんなのいろんな言葉を材料として、最終的に物事を決めるのは自分自身だと思う。過去の様々な材料を使って、どんどんアップデートしていって、世の中を作り出して行くのが自分の生き方だと思ってます。今回の企画が、みなさんにとって自分の生き方について考えるきっかけになってたらいいな。あと、考えるきっかけとして『知る』という行為がもっと広まったらいいなと思いました。Hirokiくんどうですか」

Hiroki 「俺はバンドという単位の中でいうと暴走特急という感じでやってるから、あまりリスクって気にしなくて(笑)。でも、ストッパーになってくれる友達がいるから、やりたいようにできてるのもわかっている。今回のワークショップで『知る』ことが、謙虚になって学ぶことでもあると知ってすごく勉強になった。あと、今回は『知る』と『話す』というダブルテーマでワークショップを進めていたなと思いましたね」

清水文太「確かにそうだった。対話は重要だよね。画面越しでも心が伝わることってあると思うし、そういうことがいっぱい増えて行くことが増えると思うと、これからが楽しみですね」

Hiroki「ですね! ポスト・パンデミック。今回色々被害を受けた方がたくさんいると思うけど、世界経済が止まったことで『自分がやってることは何か?』とかたくさん考える時間がたくさんあったと思う。これから、この動きに対して自分がいかに準備していくべきかというところですね。文太くんは準備を進めてますか?」

清水文太「色々進めてますよ。服も楽しいけど、音楽も楽しいから近いうちまたみなさんに見せられるものがあるかと思います。とりあえず、これからみなさんがレコーディングしてくれた音から音楽を作ります。ワークショップに参加してもらってありがとうございました! またどこかで会いましょう!」




清水文太1997年12月1日生まれ。スタイリストとして、19歳から水曜日のカンパネラのツアー衣装や、著名人、テレビ・企業広告のスタイリング、Benettonをはじめとしたブランドのアートディレクションを手掛ける。コラムニストとして雑誌「装苑」の連載などに寄稿。2019年11月20日にアルバム『僕の半年間』を発売。RedbullMusicFesでのDJ・ライブ出演など、アーティスト・スタイリスト・クリエイティブディレクターとして多岐にわたる活躍を見せている。Instagram:@bunta.r / @bunta.worksTwitter:@0caloriefood公式HP:https://www.buntashimizu.com/


Hiroki Ikegawa1990年5月21日生まれ。兵庫県宝塚市出身。これまでに40ヵ国以上200近くの都市に渡りCrossfaithのベーシストとして世界を駆け回る。またバンドにおいてのマーチャンダイズ、LOOKBOOKのディレクターでもあり、warp Magazineの20周年特集号への文筆での参加やカルチャー面での活動も精力的に行なっている。5月20日にCrossfaithから新譜「SPECIES EP」が発売された。Instagram:@hirocrossfaithTwitter:@hirocrossfaith


文喫文化を喫する、入場料のある本屋。人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで約三万冊の書籍を販売。一人で本と向き合うための閲覧室や複数人で利用可能な研究室、小腹を満たすことができる喫茶室を併設する。エントランスでは雑誌と関連するテーマの書籍を販売。普段はあまり出会うことのできないラインアップも交え、来店されたお客様の新たな興味の入り口となる。また、企画展も定期的に開催。入場料 1,500円(税別)※土日祝は1,800円(税別) 珈琲と煎茶はおかわり自由。

YOURS BOOK STORE文喫のイベントや展示の企画を手がけるブックディレクションブランド。本を用いた空間プロデュースや企画コンサルも行う。今回のワークショップは有地和毅、深井航が企画運営を担当。https://yoursbookstore.jp


『READING Intro』清水文太、文喫2020年6月12日(金)、清水文太と本と出会うための本屋「文喫」が、本を読む前に聴く音楽を考え、制作するオンラインワークショップ「知るを知る。」を開催。最後にはレコーディングを行い、参加者それぞれが表現した「知る」について音や言葉を録音した。その音源をベースに、制作したのが「READING Intro」だ。 本を読む前に聴くことで、「本と向き合うモード」へと切り替える手助けをする。よりディープな読書体験に没入するための音楽。本を読む前のルーティンとして、知ることと向き合うためのスイッチとして、「READING Intro」に耳を傾けてみてほしい。AppleMusic、Spotifyなど各種音楽配信サービスにて2020年8月17日にリリース予定。SpotifyAppleMusic

当記事はNeoLの提供記事です。

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