「Ham」ずっと真夜中でいいのに。が描く堂々巡りの語り草

UtaTen

ずとまよの新たな一面!?



ずっと真夜中でいいのに。

通称ずとまよが、8月5日に3枚目のミニアルバム『朗らかな皮膚とて不服』をリリースしました。

ミニアルバム発売前から収録曲の『お勉強しといてよ』『MIRABO』『低血ボルト』のMVが、立て続けに公開され多くの反響を呼びました。

その中身は物語性の強い構成や、楽曲の垣根を超えてアニメーションに登場するモチーフから考察向けの内容となっています。

そして、ミニアルバムのリリースから約1週間後、新たに公開されたのが『Ham』。

これまでのMVで公開されたずとまよの楽曲は、疾走感のあるポップなものが多かったのですが『Ham』はその中で異色を放っています。

メロウで落ち着いた曲調に乗せて、過ぎ去った愛が語られる『Ham』。

MVのサムネイルになっているイラストからも、楽曲の雰囲気を彷彿させる儚さを感じることができます。

一聴すると別れた恋人を想いながら、別れのつらさや苦しさを歌った一曲に聴こえます。

しかしMVを見て、歌詞を読みながら楽曲を聴くことでまた違った捉え方が出来るのです。

今回は、この曲の歌詞を紐解きながら『Ham』の物語が向かう先を考察していきます。

▲ずっと真夜中でいいのに。『Ham』MV

朝目覚めてすぐに君のことを思い出す。

この歌詞から、僕の暮らしの中に君への想いが当然のように組み込まれている様子を伺えます。

夢で君の鼓動を聴き、高鳴る胸。しかし飛び起きると、自分の部屋の見慣れた天井が目に映ります。

君がもういないことやいなくなってから長いことが、この短いフレーズから受け取ることが出来るのです。



もし君に会えたら。

本当は話したいことも聞きたいこともたくさんあるのに、きっと君を目の前にしたら何もできなくなってしまう。

当たり障りのない「久しぶり」という一言さえ、口に出せないのだろうと自嘲しつつ、君のいない生活に馴染んでいく僕の様子が描かれています。

夢の中で見た君との幸せな時間と、僕が君のいない世界で過ごす緩慢な時間。

その温度差を感じさせるとともに、痛みを伴う僕の感情が聴く者の切なさを助長します。

堂々巡りの自己嫌悪




君のいない生活を過ごしながら、僕は君との別れを強く後悔します。

「もっといたいよ 君と」と伝えることができれば、繋ぎ止められたかもしれない関係。

しかし口に出せば君を困らせてしまうかもしれないし、何より僕自身がそれを口に出す勇気がないのです。

僕の不甲斐なさが余計に、後悔を募らせるフレーズです。



君と僕の関係性は、どちらかが嫌いになったとか、大きな喧嘩をして疎遠になったとか、そういうものではないのかもしれません。

ただ、少しのすれ違いや小さな傷が重なって別れを選ばざるを得なかったのではないでしょうか。

それを君のせいにするつもりはなく、むしろ自身を責めることで存在価値を見出しているのかもしれません。

また、遠くへ行ってしまった君が、僕の知らない場所で傷口を痛めているのだとしても、君が他の誰かに癒されることを願えないでいます。

僕の生活は、そんな後悔と自己嫌悪の中に溺れていきます。



君を引き止めることはできなかったけれど、僕は本当は君と離れたくなかった。

思い出や記録の中に残る温度のない君ではなく、あの頃のように「君といたい」。

サビでは痛いほど真っ直ぐな君への想いが綴られています。

MVから見る「君」と「僕」



『Ham』のMVは「僕」の視線をなぞる、一人の少女の物語で構成されています。

そして「君」はその少女に良く似ているのですが、モチーフとなる色や表情が正反対の少女として描かれています。

二人は幼い頃から共に生活をしていましたが、大人たちに引き剥がされてしまいます。

君のいない生活に慣れた僕でしたが君のことを忘れられずに、変わり果てた姿の君に会いにいくのです。

姿形は良く似ているのに、同じにはなれない二人の関係性。

ずとまよのMVによく登場するハリネズミのキャラクターからも連想できますが、近づけば近づくほど相手を傷つけてしまう“ハリネズミのジレンマ”を彷彿とさせる表現です。



僕が君に「まだもっといたい」と言えなかったから、僕の前から去り、傷つけてしまった。

どうにもならない過去の過ちを後悔しながら、それでも僕は君を諦めることができません。

無駄だと知りながらも、夢で見る君の影を追う僕の複雑な思いが、この歌詞では描かれています。



僕が変わり果てた姿の君に出会ったとき、何を言えばいいのだろう。

もうあの頃の君に会えないと分かっていても、君のいない世界で生きていかなければなりません。

いつも通りの生活をしながら、君を想う。

諦めにも似た愛情が、この歌詞には込められているように感じられます。

TEXT D

当記事はUtaTenの提供記事です。

あなたにおすすめ

ランキング

ランキングをもっとよむ

注目ニュース

注目記事をもっとよむ

あなたにおすすめ