LUCKY TAPES 高橋海×kojikoji 甘美なハーモニーが酷暑をクールダウン、ブルーな名曲誕生の舞台裏を語る

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2018年の1stアルバム『dressing』リリース以降、ホーンやパーカッション、コーラスなどをフィーチャーしたパフォーマンスで、国内外で精力的にライブを行ってきた3人組バンド、LUCKY TAPES。昨年から今年にかけ、「Actor」、「Mars」というシングル2作、そして、7月に配信限定のライブ音源『LIVE IN (personal)SPACE』 を発表してきた彼らの最新シングル「BLUE」がリリースされた。この作品では、動画サイトやSNSで発表したヒップホップの弾き語りカバー動画がバイラルヒットを記録し、今年1月に初のEP『127』をリリースしたばかりのシンガーソングライター、kojikojiをボーカルにフィーチャー。バンドサウンドにとらわれない抑制の効いたメロウネスをたたえたサウンド、そして、LUCKY TAPES高橋海とkojikojiの生み出す甘美なハーモニーが酷暑をクールダウンしてくれる1曲になっている。コロナ禍でライブが行えない今、逆境をポジティブに転換するかのように生み出された今年の夏を象徴するブルーな名曲について、高橋海とkojikojiに話を訊いた。


──まず、今回初顔合わせとなるお二方の出会いについて教えてください。

高橋:kojiちゃんがLUCKY TAPESの「COS feat. BASI」を弾き語りでカバーした動画をアップしていて、その投稿を、韻シストのBASIさんがSNSで紹介していたんです。弾き語りのカバー動画をネットに上げている人は沢山いると思うんですけど、kojiちゃんがカバーしている楽曲は、ヒップホップやR&Bだったり、他の方たちとは明らかに違っていたんですよね。最近は、彼女を筆頭にそういったジャンルの曲をカバーする人も増えてきているんですけど、kojiちゃんはその先駆者というか、そのスタイルに新しさを感じたと同時に歌声の素晴らしさに惹きつけられるものがあったんです。それから、SNSを通じて連絡を取り合うようになり、2018年、LUCKY TAPESとSIRUPがビルボードライブ大阪で2マンライブをやった時、楽屋に挨拶に来てくれて、そこで初めてお会いしました。

──kojikojiさんの存在が広く知られるきっかけとなったBASIさんの「愛のままに feat. 唾奇」のカバー動画は、ともすればイカつい印象があるヒップホップをアコースティックアレンジで囁くように歌ったアプローチが大きな話題となりましたが、そもそも、ヒップホップを弾き語りでカバーしようと思ったのはどういうきっかけだったんですか?

kojikoji:もともと、曲は明るいけど、リリックが暗いとか、一曲のなかで相反するものがある曲が好きなんですけど、私のなかでヒップホップがばちっとハマったのはhokutoさんのトラックにラッパーの唾奇さんをフィーチャーした「Cheep Sunday」という曲なんです。トラックはすごいキラッと華やかなんですけど、唾奇さんのリリックはダークで、ヒップホップのダーティーな感じががっつり出ていて、自然と共感できたし、音に対する言葉のハメ方がすごい好きだったので、ずっと聴いていたら、曲を覚えてしまったんです。私は歌うのが好きなので、曲を覚えたら歌うのは自分にとっては自然なことなんですけど、その時、ずっとやっていたギターで弾き語ったら、面白いかもって。

──以前からヒップホップは聴かれていたんですか?

kojikoji:全然聴いてなかったんです。大学生の頃、シティポップをよく聴いていて、LUCKY TAPESさんも3年くらい前にYouTubeで知って以来、リスナーとして作品を聴いたり、ライブを観に行ったりしていて。ヒップホップを聴くようになったのも、LUCKY TAPESさんの関連動画を漁っているうちに唾奇さんの動画が出てきたんですよ(笑)。そういうきっかけにもなったLUCKY TAPESさんと今回まさかご一緒できるとは夢にも思っていませんでした。

──そして、2018年の初対面以来、親交が続いていた、と。

高橋:そんなにしょっちゅう連絡を取り合っていた訳ではないんですけど、僕らのライブが関西であるたびに来てくれたり、僕自身、彼女が投稿する音楽動画を楽しみに観ていたり。そんななかで、一緒に音楽を鳴らせたらいいなという想いが徐々に芽生えていって、今回、この楽曲のデモができた段階で、彼女の声が合いそうだなと思ったので、直接連絡させていただきました。
LUCKY TAPES 高橋海×kojikoji 撮影=森好弘
LUCKY TAPES 高橋海×kojikoji 撮影=森好弘

自分自身、そこまでキラキラしていないというか(笑)。今作っている曲たちは限りなく素の自分に近いと思います。


──2018年のアルバム『dressing』以降、LUCKY TAPESはシングルの「Actor」と「Mars」、配信限定のライブ音源『LIVE IN (personal)SPACE』と、作品リリースのペースはゆるやかですが、バンドを取り巻く状況はいかがですか?

高橋:ここ、1、2年、LUCKY TAPESはライブ中心に活動してきたこともあり、また、個人的にはプロデュース業やCM音楽なんかを制作していたこともあって、LUCKY TAPESとしてまとまった作品はリリースできていなかったんですけど。世の中がこういう状況になり、ライブの現場が減って、自宅にいる時間が増えたことで、今回の「BLUE」をはじめ、現在は制作に集中出来ているので、2020年後半戦は色々とリリースを重ねていけたらという段階ですね。

──さらにいえば、ホーンやストリングスをフィーチャーして華やかな明るいアレンジが施された「Actor」や「Mars」といった直近のシングルと比較すると今回の「BLUE」は、メロウなタッチで音数も少ないですよね。

高橋:ライブ現場では、ホーン隊やコーラス、パーカッションなどのサポートメンバーを6、7名加えた編成で、楽曲制作の段階でもライブを意識したアレンジを今まではしてきたんですけど、ライブがなくなったことで、そこから解放されて、最近はライブアレンジを無視した曲作りをしているので、音の使い方や重ね方がより自由になってきています。

──アルバム『dressing』は、海さんのなかで“バンドはこうあるべし、ソロはこうあるべし”という固定概念から解放された作品だったと思うんですけど、その先でまだまだ解き放つべきものがあった、と?

高橋:そうですね。『dressing』はバンドとソロの境目を超えたというか、その二つをミックスした作品ではあったんですけど、それでもライブ活動がメインのLUCKY TAPESと制作がメインのソロとでは、発想や表現方法の違いがありました。しかし、今回の制作では、スタジオには一切入らず、個人でトラックを作っているやり方そのままというか、メンバーとも直接会うことなく、リモートでギターとベースを入れてもらって、それに対して、こちらの意見を伝えて、新しいアイデアを交えた音を送ってもらうという作業を繰り返しながら、全ての作業を自宅のパソコン一台で完結させる作り方をしました。

──録音自体がリモートワークだったんですね。

高橋:そうなんです。意外とこのやり方が我々には合っているんじゃないかと、個人的には感じました。メンバー二人がどう思っているのか、この曲が完成してからまだ会っていないので、分かりませんが(笑)。これまではメンバーがスタジオや自宅に集まって、その場でアイデアが出てくるまでひたすら待つ。出てきた音に意見して、次のアイデアが出てくるまで待つ、その繰り返しに時間がかかっていたんですけど、今回はそれぞれが自宅だったり、自分に合った環境でゆっくりアイデアを練ってもらったことによって、制作の進行が思いのほかスムーズだったんです。

──ソーシャルディスタンスが求められる今、図らずして新たな曲作りのアプローチが生まれつつあり、それが抑制の効いた楽曲にも繋がっている、と。

高橋:あと、自分自身、そこまでキラキラしていないというか(笑)、明るくアップテンポなテンションというより、落ち着いていて、耳馴染みのいい音や曲の方がしっくりくる体質なので、「BLUE」をはじめ、今作っている曲たちは限りなく素の自分に近いと思います。LUCKY TAPESはキラキラして、明るい楽曲が多い印象を持たれているかもしれませんが、歌詞やコード進行、アレンジにどこか愁いを帯びた様な要素が要所要所入っていますし、そういった意味で、最近はやりたい音楽により近づいている気がしています。

──「Actor」と「Mars」にしてもリリックは必ずしも明るくないというか、むしろ、複雑な心境が描かれていますもんね。必ずしも明るいだけではないというLUCKY TAPESについて、kojikojiさんはどう思われますか?

kojikoji:人間らしいと思います(笑)。

高橋:表もあれば、裏もある、みたいな?

kojikoji:そう。そのほうが個人的には共感できるなって思いますし、直感的にLUCKY TAPESの音楽を好きになったのも、そういうコントラストが関係していると思います。
LUCKY TAPES 高橋海×kojikoji 撮影=森好弘
LUCKY TAPES 高橋海×kojikoji 撮影=森好弘

主人公の投げやりなモードが感じられる曲だと思ったんですけど、私自身もそういう部分があるから自然と入ってきて、歌声となって出ていった感じです。


──お互いの共通する音楽観やテイストを踏まえつつ、制作の進め方としては、高橋さんが作ったデモをkojikojiさんに送ったんですか?

高橋:デモというより、歌詞もメロディもアレンジもほぼほぼ完成した段階で送りました。当初はkojiちゃんにはオクターブコーラスのみでの参加をイメージして声をかけたんですけど、実際にレコーディングに入った際に、ソロパートを作っても良いかもという流れになって。自分の歌いやすいキーで作っていたメロディを、kojiちゃんの声の良さが一番に出る高さで作り直したり、その前後の整合性を考えたり、若干のメロディや歌詞の変更はしました。

kojikoji:いつか一緒にできたらいいですねという話をしてはいたんですけど、ある日、突然、海さんから「コーラスをお願いしようかなって思ってる曲があるんだけど……」っていう連絡をもらって。LUCKY TAPESのファンだった私にとって、その時点で嬉しいサプライズだったんです。でも、その後、私のパートも作ってくれるという話になって、私としては「歌わせてもらえるならぜひぜひ!」という感じでした。

──しかも、この曲は《こんな出来損ないでごめんね》というインパクトの強い一節から始まりますよね。kojikojiさんはどう思われました?

高橋:みんな、そこをフックアップしてくれるんですけど、自分自身ではそこまで意識して書いた一節ではないんですよ(笑)。

kojikoji:私も意識しなかったかも。

高橋:この曲をリリースした日に、すぐに聴いて下さったBASIさんがメッセージをくれたんですけど、サビ終わりの一節《思い出せずに頭の中はブルーで》がパワーワードだって仰っていました。

kojikoji:私もその一節が好きなんです。

高橋:結果的にその一節がもとになって「BLUE」というタイトルが生まれた訳ですし、この曲で描いているのは、自分に自信がなさげながらも、自由奔放に生きている、そんな人物像だったりするんですけど。それは多くの人にも当てはまるんじゃないかなという気がするし、自分やkojiちゃんにも身に覚えがあるからこそ、違和感なく歌えているんじゃないかなって。

kojikoji:私はこの曲を最初に聴いた時、《こんな出来損ないでごめんね》とか《ダサい》とか、ネガティブなワードがあちこちに散らばっていたり、歌詞から主人公の投げやりなモードが感じられる曲だなと思ったんですけど、私自身もそういう部分があって、解決しないことの自問自答、そのループにハマって、「もういいや!」ってなったりすることがあるんですよ(笑)。だから、この曲に共感できたというか、自分のなかに自然と入ってきて、歌声となって出ていった感じですね。

──kojikojiさんは今年1月に初のEP『127』をリリースされたばかりではありますが、今回のLUCKY TAPESとのコラボレーションはどんな意味を持つものですか。

kojikoji:客演で呼んでいただくのはラッパーの方ばっかりだったので、自分のなかで新たなステップに向かうきっかけになったというか、新たな自分を見せられる機会を頂けて、すごく感謝しています。

高橋:今回のコラボレーションに関して、ティザーを出した段階で、リスナーの方から「この2組が一緒に曲を作ったら、間違いなくいい曲が生まれるでしょ」というコメントが結構あって、そうした声に応えられた曲になっているといいんですけどね。

──コロナの影響でライブができない状況は非常に残念ではありますが、最後に2組の今後の活動について教えてください。

高橋:現在、ライブをあまり積極的にできない状況なので、制作に没頭する毎日を過ごしています。そうやって生まれた曲たちがこの先どんどん出ていくと思います。あと、この曲に関して、お客さんを入れたライブはできないにしても、配信ライブなのか、セッション映像なのか、何かしらの形で共演パフォーマンスをお見せできたらいいな、と考えています。

kojikoji:私も、来年、また新しいEPを出したいと考えていて、そのために動いているところなんですけど、その前、年内には客演で呼んでいただいた曲がいくつかリリースされると思います。私も同じくお客さんの顔を見てライブができないので、ライブ動画をアップして、世界中の人に私の音楽を聴いてもらいたいなと考えています。

取材・文=小野田 雄 撮影=森 好弘


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