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ニットイルミネーションで、人と街をつなぐ【SPICEコラム連載「アートぐらし」】vol.9 力石咲(美術家)

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美術家やアーティスト、ライターなど、様々な視点からアートを切り取っていくSPICEコラム連載「アートぐらし」。毎回、“アートがすこし身近になる”ようなエッセイや豆知識などをお届けしていきます。
今回は、美術家の力石咲さんが、ニットで街を編みくるむアートプロジェクト『ニットイルミネーション in 新虎通り』について語ってくださっています。


今、『ニットイルミネーション in 新虎通り』というプロジェクトを遂行中です。新橋と虎ノ門をつなぐストリートとして、2014年に開通した新虎通り。2020年には、東京オリンピック・パラリンピックのメイン通りになる予定で、2017年現在も開発が進んでいます。地域住民の目標は、この新虎通りが文化発信拠点となること。その一端として、このエリアの開発に携るUR都市機構や、地域住民とともにニットで街を色どり、人と街をつなぐプロジェクトをおこなっています。

人と街をつなぐーー。どういうことかというと、おおまかにいえば、2つのシチュエーションを考えてます。ひとつは、景色の一変した街を体感してもらい、たとえば地域住民に対しては、普段見過ごしてきた街の要素に新たに気づいてもらうこと。そして、街を訪れる人に対しては、ニットが街の案内役となって、街を回遊してもらったり街の特徴を感じていただくことを目指しています。

そしてもうひとつのシチュエーションとは、プロジェクトの遂行段階にあります。街を編み包むプロジェクトでは、私は一定期間その場所に滞在し、日々地元住民と共に作品を作り上げていくのが基本的なスタイルです。私たちの大多数は、自分の住んでいる街に対して、能動的に関わることは少ないのではないでしょうか。今住んでいる街も、たとえば生まれ育った街だから、職場が近いから、街のこの部分が好きだから、という理由で暮らしはじめ、だんだんと自分のほうが街に馴染んでいく、というイメージです。

そんな日常のなかで、ニットで自分の街を編み包む行為をするということ。ささやかですが、普段は見過ごしていた景色に気づいたり、作業に従事する住民同士の交流が生まれたり、街を訪れる外部の人に対して自分もこの街の住民なんだという自覚が生まれて案内するようになったり……。私にとっても、自分ひとりではつかみきれない街の深部を、住民との日々の編み包み作業を通して知ることとなります。

また、ただその街でプロジェクトを展開したというだけでなく、もっと人間的なつながりや地域に対しての愛着が生まれて、プロジェクトが終了して街を去る時はサウダージ状態になることも。自分のプロジェクトながら、観光やただの旅では味わえない体験をさまざまな場所でできて、なんて贅沢なんだろうと思います。
『KENPOKU ART 茨城県北芸術祭 2016』での地域住民との作業風景
『KENPOKU ART 茨城県北芸術祭 2016』での地域住民との作業風景

このような性質のプロジェクトは、もちろん楽しいだけではありません。最近「力石さんは基本的にひとりで現場に入って、その都度地元の人々とチームを組んで作品を作っていますが、人によってモチベーションの差異があったりで大変ではないですか?」という質問を受けました。サポーターを募集する時に制約は設けないので、さまざまな方が来てくださいます。当然、普段アートに触れない方、自分とは美的感覚やこだわりどころが異なる方々だらけですが、「やるっきゃない!」というのが率直なところです。

作業開始前には、プロジェクトのコンセプトや完成に向けてのスケジュール、ニットの編み方や作品としての視点を忘れないことなど、技術面や共にひとつの作品を作り上げていくことに対しての温度差をなくすように努めています。それでも、たとえば技術面でいえば、ニットというのはひとりの人間であってもその時の心理状況等が作品に出てしまうものです。同じ編み方をしても、人によって差異が出てしまいますが、それも地域住民と協働で作り上げていく作品の味わい深さではないでしょうか。その他にも、作業が進行するにつれてサポーターがアイデアを出してくれたり、当初は自分の家を包まれることに難色を示していた住民が「やっぱり自分の家も編み包んでほしい」と言ってきてくれたりと、当初の計画から徐々に変化していくこともあります。人々のこうした変化がうれしいので、自分の決めた当初のコンセプトに立ち戻りながらも、できるだけ柔軟に対応しています。

このようなプロジェクト型の作品はもちろん自分の作品なのですが、自分ひとりのものとは言い切れない部分があります。屋外で展開するということからしてさまざまな制約の上に成り立っていますし、協働作業者と共に完成に向かいます。そして、作品は仮設的なもので、展示期間が終了すれば撤去するのが一般的です。作品は消えてまたいつもの風景に戻るけれど、人々の記憶に残る作品になってくれたらうれしいですし、そんな儚い部分にニットとの親和性を感じます。

『KENPOKU ART 茨城県北芸術祭 2016』でのサポーター説明会の様子
『KENPOKU ART 茨城県北芸術祭 2016』でのサポーター説明会の様子

一方で、自分ひとりでじっくり作る作品や永久的に残る作品に憧れがあるのも事実です。社会と関わり合ってさまざまな人を巻き込んで大きな作品を作っていると、家に篭ってひとりで作品をじっくり作りたくなります。太い糸を使って全身を使うパフォーマンス的な作品を作っていると、細かい素材を使って繊細な作品を作りたくなります。とはいえ、今私が作品に使用したい素材として興味があるのは、街なかに落ちているゴミだったり、街にあふれる日用品だったりするので、完全に社会と切り離れてはいません。やっぱり、今の私は社会、都市、といったことに興味があるのです。
《リリアン建築:戸越公共のいえ》リリアン編みの構造が、建物の建設に似ていることから始まったシリーズ《リリアン建築》 街で拾ったものを建築資材として模型サイズの建造物を制作
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また、最近ギャラリー巡りをしていて感じたことがあります。当たり前なのですが、ギャラリーで展示されている作品には価格が付けられ、売れていきます。誰かの手に渡って大事に大事に残されていく。アーティストとして活動を始めた頃は、私もギャラリーで展示をするのがメインで、忘れていた感覚を思い出したようでなんだか新鮮な感覚でした。

こんなふうに、アートといってもいろいろな形態があって、私は日々ポジティブな葛藤のなかで制作活動をしています。目下注力しているのは、冒頭の新虎通りでのプロジェクト。発展途上のエリアなので、地域住民の方も試行錯誤しながらのプロジェクトであり、UR都市機構が中心にいることもあって、アート活動というよりも街づくりに関わらせてもらっている感覚があります。実験的な要素が多いので、密かに毎年同じ時期に開催して街の変化を見守れれば……と思っています。みなさんもぜひ遊びにきてください。そして一緒にニットで街を彩りましょう。

イベント情報
ニットイルミネーション in 新虎通り 
~ニットでまちを編みくるむ、アートプロジェクト~


日時:平成29年11月24日(金)~12月25日(月)
 公式サイト:http://urtra.tokyo/menu/558214

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