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相次ぐ企業の不正は、日本経済にとってチャンスである

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 日産自動車、SUBARU(スバル)の無資格検査、神戸製鋼所のデータ改ざんに続いて、三菱マテリアルの子会社が検査データを改ざんしていたことが明らかになった。こうした不正行為は、国内企業の信用失墜を通して競争力低下につながる重大な問題であることは言を俟たない。生産管理の専門家などが、管理の厳格化、コンプライアンスの体制強化、コーポレートガバナンスの強化など、さまざまな取り組みが必要だと指摘している。そうした指摘の多くはうなずける点が多い。

一方で、そうした取り組みが組織の創意工夫を委縮させるという見方もある。あまりに現場への縛りが厳しくなると、有効な解決策を見いだすことが難しくなることも懸念される。逆に考えれば、不正問題が表面化したことは、現場ベースの仕事を見直すチャンスともいえる。むしろ、そのチャンスを生かして、組織全体の革新=イノベーションを実行する好機とすべきだろう。

●不正問題の背後に潜む重要なファクター

データの改ざんなどは許されることではない。批判されるのは当然だ。なかには、データの改ざんが発覚した後も不正の恐れのある製品が出荷されていたことがあったと明らかになっている。

当該企業は、不正発覚を機に全社的な品質管理体制を見直すべきだ。現在、わが国の景気は安定しており、そうした取り組みを進める余裕もあるだろう。政府も体制の見直しに向けた働きかけを行う必要がある。その上で、データの改ざんや無資格従業員による検査が発生した根本的な原因を追及しなければならない。

原因のひとつとして考えられるのは、企業経営に緊張関係が薄れていることかもしれない。ここで言う緊張関係の希薄化とは、企業が、これまでにはない新しいモノを生み出す取り組みを進められなかったことに起因するかもしれない。従来の取り組みを続けると、私たちは作業に習熟し、学習効果が蓄積される。それをうまく使うと生産を効率化することができる。

一方、学習効果によって「ここだけ見ておけば問題ない」というように、検査項目の軽視につながる恐れもある。それが、今回のデータ改ざんなどにつながった可能性がある。新しい取り組みを進める上では、過去の発想や成功体験が常に有効とは限らない。成功体験に固執しすぎると、環境変化に対応できないこともある。既存のビジネスを重視して収益を獲得しようとする考えが強くなりすぎると、その企業の発想は緊張関係の希薄化=過去の行動様式を延長した発想に向かいやすいといえる。それは、不正などの温床を生む一因と考えられる。

●ヒット商品の創造がイノベーションをもたらす

緊張関係の希薄化を防ぐためには、需要(人々のモノやサービスを手に入れたい、欲しいと思う気持ち)を刺激する“ヒット商品”を生み出すことを考えればよい。これが基本的な発想だ。問題は、ヒット商品の創造に向けた取り組みが、口で言うほど簡単なことではないことだ。

なぜなら、そこには不確実性がある。将来、どのようなモノやサービスがヒットするかは、誰にもわからない。このリスクを避けようとする心理(経営者などの気持ち)が強くなると、企業の行動は従来の取り組みの繰り返しに向かう可能性がある。

ただ、過去のケースを振り返ると、従来にはなかった便利さや快適さを提供できるモノが需要を獲得し、成長をもたらした。ここが重要だ。多くの人が潜在的に抱える問題を解決する手段を提供できれば、需要を生み出すことは可能である。

アップルのiPhoneはその典型例だ。トヨタ自動車が生み出したハイブリッド技術も然りである。プロダクト・イノベーション(新しいモノの創造)は、従来の生産プロセスに変革をもたらす。具体的には、品質管理手法の改善や、新しい生産管理の方法が考案されるだろう。

それに加えて、新しい製品に必要な部材などの供給源の確保、生産や調達、戦略の策定と執行を司る組織、その販売手法(マーケティング)の分野でも、新しい取り組みが進むだろう。

供給サイド(企業)のイノベーションの発揮が、ヒット商品の創造につながる。ヒット商品が生み出されれば、雇用機会も増える。過去の延長線上で、今日も明日も、一年後も、基本的には同じ発想に基づいた経営を続けていると、その企業は需要を取り込めなくなり、最終的には市場原理によって淘汰される可能性がある。ヒット商品の創造を進めることが、競争原理の発揮にもつながるのである。

●イノベーションのチャンスに恵まれた日本経済

ある企業経営者とディスカッションを行った際、彼は「既存の事業だけでなく、新しい事業プロジェクトが欠かせない」と話していた。足許のわが国の経済環境を見渡すと、この2つのポイントは満たされている。景気は緩やかな回復を維持している。わが国の景気回復を支えた海外経済も、比較的安定している。加えて、物流業界や介護をはじめ、多くの分野で人手不足が深刻化している。つまり、潜在的なニーズがある。この問題を解決できる技術を開発することが企業の成長と、需要の創造につながるだろう。

わが国には、イノベーションを進めるチャンスがある。それをうまく生かすことが経営者の役割だ。ヒット商品の開発を目指し、従来にはない新しい取り組み=イノベーションを重視する企業が増えれば、産業界全体にも競争への意識が芽生えるだろう。また、新しい取り組みが増えるなかで、新規参入や起業が増加する可能性もある。それは、社会の新陳代謝の向上と呼ぶべき展開だ。

データの改ざんなどに関して、ただ単にそれを批判するだけでは新しい発想は生まれづらい。不正などが発生する余地が一掃されるべきであることに、異論の余地もない。その上で、人々の自由な発想や創造性を生かして、より多くの付加価値を創造することが目指されるべきである。産業界や大学をはじめとする教育機関と議論を重ね、その結論を政策として実行していくことが、安倍政権が重視する生産性革命と人材開発には不可欠だ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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