最新ニュース、芸能、ネットの話題をまとめ読み

 

福井の羽二重餅、生だとすごいんです【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.16 福井名物「羽二重餅」】

今回のテーマ食材は「羽二重餅」である。

見た瞬間「よく知っている」「懐かしい」と思った。しかし同時に「こういう字を書くのか」とも思った。

◆懐かしいけど食べたことがない

何故、よく知っているのに、字さえ知らないかと言うと、ワケがある。

私の父は新潟県に実家がある。よって毎年お盆には墓参りのために新潟に行っていた。

行っていた、と簡単に言うが山口県からである。控えめに言って、クソ遠い。オール新幹線で行っても6時間はかかる。

飛行機に乗ればいいと思われるかもしれないが、まず福岡空港に行かなければならないので時短になっているのか怪しいし、親父殿が飛行機というのは大体落ちる物だと思っているので、その選択肢は最初からなかった。

確かに飛ぶからには落ちる。少なくとも列車より落ちる可能性は高い。そんな親父殿のド正論により、陸路で行くのだが、いつもトータルで10時間かかった。

人体という物は10時間も乗り物に乗っていると若干おかしくなってしまうものだが、親父殿は齢70超えて、未だにこのバンギャかよという行程で毎年新潟に行っているそうだ。

新潟まで、電車、新幹線、特急列車、バスと、乗り継いでいくのだが、その中乗っているのが一番長いのが特急列車だ。確か「雷鳥」という名前だったと思う。

今は金沢が終点のようだが、昔はこれで新大阪から新潟まで行っており、5.6時間は乗っていたと思う。

その列車の中での車内販売で「羽二重餅」が必ず登場していたのだ。

車内販売とは、乗務員が弁当やコーヒー、土産物の入ったワゴンを押しながら車内を練り歩き、乗客に売り歩くものである。

売られている弁当や土産物は大体、列車が通過するところの名物だ。突然マカダミアナッツを推してきたりはしない。そして羽二重餅は福井名物である。

つまり、何故知っていたかというと車内販売の人が「福井名物、羽二重餅はいかがでしょうか」と言っているのを延々聞いていたからだ、何せこちらは6時間も乗っている、車内販売も1往復や2往復ではすまない。

◆江戸時代からある上品な銘菓…では終わらなかった

だが逆に言うと耳でしか聞いたことがなく、このたび初めてあの時死ぬほど聞いていた「はぶたえもち」が「羽二重餅」だと知った次第である。

新潟の祖母が亡くなって以来、新潟には行っていなかっため、意外なところで数年ぶりの再会である。

しかし、再会もなにも「そういえば羽二重餅、食ったことねえ」ということを思い出した。羽二重餅も、会ったことない奴に「なつかしい」を連呼されて「こいつ誰だっけ」とさぞ困惑だっただろう。

羽二重餅とは、前述どおり福井の銘菓だ。餅粉に砂糖と水あめを加えて練った餅で、1847年「錦梅堂」という店が作ったのが始まりだといい、つまり江戸時代からである。相当歴史が古い。

福井で盛んな羽二重織りにちなんで作られたそうで、確かに箱を開けて見ると、薄く平べったい餅が二枚重ねてあった。

材料がシンプルなだけに、味も甘さ控えめで、とても柔らかく食べやすい。

それにしても、20年以上名前を聞き続けながらも、食べることのなかった「羽二重餅」を今になって食べるとは、運命とは数奇、長く続く銘菓だけあり、実に歴史を感じさせる上品な味わいであった、と厳かに締めようと思ったが、話はそこで終わらなかった。

◆生羽二重餅は自ら「食べにくさ」をアピール

送られてきた羽二重餅は2箱あったのだ。大事なものだから2箱入れたのか、と思ったが、どうやら種類が違うのだ。

「生羽二重餅」そう書かれていた。

生キャラメルを発端に、何でも生にしてしまえブームを経た我が日本だ。羽二重餅が生になっていてもおかしくはない。おかしくはないが、この生羽二重餅、何かおかしい。

まずパッケージの情報量が半端ない。普通の羽二重餅が「食べればわかる」というぐらいシンプルなパッケージだったのに対し、こちらは「まあ食う前に俺の話聞けよ」と言うぐらい色々書いてある。

まず「食べにくい新食感」と書かれている。まさかの食べづらさ推しだ。つっこまれる前に自分で切腹しておくという高等テクである。

他にも「解凍後は冷凍保存がおすすめです(冬眠します)」「食べるときは常温に戻してから召し上がるのがおすすめです(眠りから目覚めます)」など、明らかに普通の羽二重餅と比べて「テンションがおかしい」のだ。

様子が違いすぎるので別メーカーかと思ったら、どちらも「マエダセイカ」製の羽二重餅だ。ここも昭和29年から続く店である。

だがこの際、外見はいい。肝心の食べづらさの新境地を開いた生羽二重餅とはどのようなものか、さっそくあけてみた。

◆ゲル状の羽二重餅が箱一面に!

そこは一面の羽二重餅だった。「生」の名に恥じない、ゲル状の羽二重餅が箱一面に張り巡らされているのだ。

それを、ヘラですくって食べるのだ。確かに普通の羽二重餅よりは食べにくいが、風呂場で全裸で食ったほうが良い系ではないので安心だ。

味はというと、普通の羽二重餅が「結構な御点前で」という美味しさだったのに対し、こちらは「あま、うま」という逆にIQが下がる系の美味さである。

これはいろんな意味で「新しい羽二重餅」だ。伝統は守りつつ、新しいことにも挑戦しているのである。

ところで、言うほど食べにくくない、と感じた生羽二重餅だが、これを取引先の会社等、大人数が分けて食べる可能性がある場に土産として持って行ったら、出禁である。

切ってないカステラなどの比ではない。そういう食べにくさはだけは確実である。

<文・イラスト/カレー沢薫>

【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』『ねこもくわない』『ナゾ野菜』、コラム集に『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』『ブスの本懐』などがある


外部リンク(女子SPA!)

Yomerumoをフォローする

Yomerumoから人気記事をお知らせします!

Twitter

グルメ最新記事

記事一覧

注目ニュース

> もっと見る


掲載情報の著作権はニュース提供元企業等またはGMOアドマーケティング株式会社に帰属します。記事の無断転用を禁じます。
すべての人にインターネット
関連サービス