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歴史教科書からの坂本龍馬"排除"にファン悲痛…原因は暗記重視の高校教育と大学入試か

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■龍馬ファンたちは「まっこといかんぜよ!」
 高校と大学の教員らで作る「高大連携歴史教育研究会」が、高校の授業が大学受験への対応で暗記中心になっていることを問題視して、教科書に掲載する歴史用語をおよそ半分に減らす"精選案"を発表した。その中には、あの坂本龍馬も入っており、大きな話題を呼んでいる。

同研究会では、実際の歴史上の役割や意味が大きくないとして坂本龍馬のほか、武田信玄と上杉謙信、そして吉田松陰などを削るとしている。その一方、「共同体」のような概念や「グローバル化」といった、現代的課題につながる語句を追加するとしている。

 “龍馬のふるさと“高知県にある坂本龍馬記念館の高松清之館長は「残念です。高知県にとって、歴史上の人物といえば"坂本龍馬"です。幕末維新の上で龍馬の役割は大きく龍馬の行動や考え方は"思考力や表現力を重視する教育"に十分あたると思います。なぜ龍馬が消えてしまうのでしょうか…?」とコメント。

また、国民的人気のある坂本龍馬ファンからは悲痛な叫び声が上がる。横須賀市にある焼鳥店「やきとり竜馬におまかせ!」の店主・齋藤秀一さんは16歳のときに司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』に出会って以来の坂本龍馬の熱心なファンで、龍馬や幕末史を語り合う場を作りたいと9年前に脱サラ、この店をオープンさせた。店内には龍馬ファンの著名人のサインや、関連ドラマのポスターが掲げられている。11月15日は龍馬の誕生日かつ命日でもあり、集まった常連客たちは龍馬"排除"の報せに「まっこといかんぜよ!」と気勢を上げていた。

 ネット上には様々な反応があり、番組にも「龍馬は神格化されすぎ大げさなんだよ」「龍馬から日本の財閥が始まっているわけだし、要るかな」と、賛否両論のコメントが寄せられた。

■「龍馬="西郷のパシリ"という見方もできてしまう」
 坂本龍馬といえば、日本初の"商社"である「亀山社中」の立ち上げ、討幕のきっかけとなった薩長同盟の立役者、明治新政府の基本方針とも近い「船中八策」を作成したとされるなど、ファンたちが指摘するように、様々な功績も挙げられる。

 今回の騒動について、NHK大河ドラマの監修も務めたことがある本郷和人・東京大学史料編纂所教授は「僕が高校生の頃、教科書に坂本龍馬は載っていなかった。やっぱり司馬遼太郎の小説ですごく人気になったことがきっかけだろう。小説の世界が学問を変えていった、一番いい例だと思う。ただ歴史学的には、坂本龍馬="西郷隆盛のパシリ"という酷い表現もできてしまう。それだけに、教科書から消えてもしょうがないという判断もあり得る。上杉も武田も川中島の戦いも、当時の中央の情勢とは関係がないという言い方もできる。敵に塩を送ったというエピソードも、おそらく歴史的事実ではない。みんなが大好きな新選組だって、全ての教科書は載っていない」と話す。

 その上で本郷氏は「どういう考え方の下に語句のリストを決めたのかがわからない。織田信長が本当に優れた戦国大名だったのかという問題について、『違う』という意見が今では大勢を締めている。織田信長の評価ですら分かれることがある。それなのに、要る言葉・要らない言葉を誰が決めるの?ということになってしまう。ただ、『坂本龍馬を落とす』と聞けばびっくりするので、注目を集めるのが目的だったのかもしれない。例えば"大岡越前"として知られる大岡忠相や、上杉謙信・武田信玄、そして両者の『川中島の戦い』など、エンターテインメント性、物語性があって、"ドラマの常連"のようなものを日本史という科学から落としたいという意図を感じた」と指摘。

「例えば宮本武蔵は吉川英治の小説で一躍有名になったが、今は下火だと思う。坂本龍馬はずっと人気なので、やっぱり何か我々にフィットする現代的なものがあるはず。そういうことを勉強するのは悪くない。若い人たちの歴史嫌いを考えた時、あなたたちが知っている坂本龍馬は歴史学の教える坂本龍馬と違うと強調するのは得策ではないと思う」との見方を示した。

■教科書の内容を覚えることが歴史の授業なのか?
 慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「本来、歴史を読み解き、考察する力のある人が歴史のスペシャリストのはずだが、今の入試では、どれだけ正確に暗記しているかを問うものになっている。共通試験の膨大な答案を採点するだけでも大変なのに、点数の基準が明確にしづらい自由記述を増やしていく難しさもあるだろう。でも、日本は全ての"出口"が大学受験になっているので、入試が変わらないと授業も変えづらい」と話す。

 「高大連携歴史教育研究会」によれば、高校の主要な歴史教科書「世界史」「日本史」ともに、およそ3400~3800語が掲載されており、大学入試で問われる可能性のある用語も3500語にも上る。これは1950年代に比べて3倍近くの量で、現場からは2000~2500語程度にすべきという意見も出ているといい、高校・大学教員を対象にしたアンケート調査でも「大学入試の影響で用語の暗記中心の授業形態になっている」という質問に肯定的な回答が7割を超えたという。

 今回の"精選案"について同研究会はTwitterで


と説明している。

また、2020年度からは大学入試が択一式の「センター試験」に代わって、暗記よりも思考力や表現力を重視する「大学入学共通テスト」が利用されることも背景にある。これについても同研究会は


 とツイートしている。

自身も教科書執筆の経験がある本郷氏は「物語的な要素を入れないと高校の子たちは付いてきてくれないだろうと思って草案を書いたら、高校の先生方に『駄目です。現場の教師は教科書に書いてあるものは原則として全て覚えろと教育しています。あなたが書いてきたものは余計な物が多すぎる』と言われた。バカじゃないかと思った。教科書を全部覚える必要ないでしょうと。ただ、これはブーメランでもある。高校の先生からすれば『そんなこと言ってたら大学受験に受かりません』ということ。だから僕たち大学教員が一番悪いとも言える。本来、これを知っているか知らないかというクイズみたいな入試はダメなんです。教員は工夫してないと言われても仕方ない。択一式でも、上手に問題を作れば大丈夫だ」と話す。

■「直虎は男だと思う」「材料の中からどんな歴史像を立ち上げるかが歴史学」
 作家の峰なゆかが「スマホで調べれば何でもわかる時代だし、物事を暗記することの価値は下がっていると思う」と指摘すると、本郷氏も「僕が担当しているテストでは何でも持ち込みOK。そういう問題しか出さない。スマホで調べてもいいし、むしろ"先生を持ち込みました"というような機転を求めている。論理性のある方が良い点を取れるように工夫して問題を作れば良い」コとメント。

 「昔、師匠の石井進先生(東大名誉教授、日本中世史の権威)に『先生が書く教科書は分厚いですね』と言ったら、『必要ないものは覚えなくていい。使えるところだけ使えば良いんだよ』とおっしゃった。高校の先生が『君たちが覚えたいところを覚えればいいと先生がおっしゃってくれればそれでいい。事件や戦争、改革などの事例について、先生が適宜メカニズムや概念を教えてくれてれれば、全てを暗記する必要はないはず。A、B、Cという材料が与えられたときに、そこからどういう歴史像を復元させ、立ち上げていくかというのが歴史学の肝。いくつもの材料の中から理論的に構築していく手順を覚えていく、それが大事なことではないか。その作業は他の分野でも応用が効く。2年で覚えたことは2年経てばすっかり忘れてしまう」。

今回の問題について渋谷で話を聞いてみると、

「良いんじゃないですかね、減ったほうが。勉強しなくて済むから」(女子高生)

「同世代が知らないんだったら、別にいい。覚える単語が減るのはいい。歴史に関心ないし」(女子高生)

「近現代は残すべきだし、大昔のことは減らしてもいいと思う。坂本龍馬を削るのは大反対」(中年男性)

「歴史は面白いところがあるから興味を持って覚えるもの、反対」(中年男性)

「上の世代が知っていることを、知らないってことはバカになる、だから反対」(女子高生)

と、賛否両論だった。

 本郷氏は「30年くらいしたら、歴史学がよりフレキシブルな社会学に取って代わられてしまう可能性もある。だからアニメやゲーム、ドラマ、小説もひっくるめて歴史を好きになってもらったほうがいい。今年の大河ドラマの井伊直虎も男性だったという説があるが、僕も直虎は男だと思う。でも、そういうことも教科書から削っていくということではなく、自由に話し合いをしながら面白がっていけばいい」と語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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