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「転勤するか退職しろ」…応じる必要はある?

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*画像はイメージです:https://pixta.jp/

大企業など、日本や海外に支店を持つ会社では、転勤となることが多々あります。会社側からすると人材に様々な経験を積ませること、売上や生産力の向上、優秀な社員を送り込むなどの狙いがあるのでしょう。

一方で、不祥事や能力不足による「飛ばし」ということもあるよう。なかには、「お前はいらないから、遠方への転勤か退職かどちらかを選べ」と言われることもあるようです。

そのような行為は、やはり違法のようにも思えるのですが……。このようなことは許されるのか。企業法務に詳しいパロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に解説していただきました。

■転勤しなければ退職は許される?
「まず、会社が従業員に転勤を命じることも“業務命令”ですから、命令の根拠となるものが必要です。

この点について、最高裁判所は、就業規則や労働協約において“業務上の都合により転勤を命じることができる”旨の定めがあり、実際にも従業員を転勤させていた、(入社の際に)勤務地を限定する旨の合意がされていない、といった事情を前提として、

「会社は個別的同意なしに・・・勤務場所を決定し、これに転勤を命じて労務の提供を求める権限を有する」

と述べています(最高裁判所昭和61年7月14日判決・判タ 606号30頁)。ただし、根拠がある場合でも、会社が従業員を自由に転勤させることができるという訳ではありません。

上記最高裁昭和61年7月14日判決は、

「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもない」

として、転勤を命じるにも一定の制約があるとしています。

つまり、“業務上の必要性”が存在しない場合や、業務上の必要性があったとしても、不当な動機・目的(例えば、会社に批判的な従業員への嫌がらせ等)のもとに転勤が命令された場合、あるいは、従業員に“通常甘受すべき程度を著しく越える不利益”を負わせる場合には、転勤命令は“権利の濫用”として無効とされるということですね。

ですから、そもそも転勤命令が無効であれば、従業員は転勤命令に従う必要がないのですから、会社が従業員を“転勤に合意できないならクビだ”とすることはできません」(櫻町弁護士)

■命令が有効である場合は?
「一方、転勤命令が有効である場合には、従業員にはこれに従う必要がありますから、転勤を拒否することは“業務命令違反”ということになります。

そうすると、業務命令違反を理由とした懲戒処分がなされる可能性があります(ただし、懲戒処分をするには就業規則において規定されている必要があります)し、また、場合によっては“解雇”ということもあり得るかもしれません。

例えば、神戸から岐阜の工場への転勤命令を拒否した電算端末機オペレーターが解雇(普通解雇)されたという事案があります。

オペレーターは、当該転勤命令は人事権の濫用として無効であると主張しましたが、裁判所は、転勤命令は

「造船不況による造船需要の大幅な低落と操業度の低下によって生じた大量の余剰人員を解消すると共に、航空機事業部における人員を増強する必要等、被控訴人の業務上の必要性のために行われた」

ものであり、また、

「控訴人と同様、右造船不況等の緊急対策による配転の対象となった多数の従業員は・・・それぞれに個人的に大きな犠牲と不便を忍びつつ、配転に努力したこと、本件配転について、控訴人から苦情処理の申立を受けた組合では、控訴人本人から事情聴取するなど調査したうえ、結婚を間近に控え、夫婦共働きの必要があるとか、将来郷里の母を引き取り扶養しなければならないという控訴人主張の理由では、被控訴人に配転撤回を求めるには不十分であり、その程度の事情ではむしろ配転に応ずるべきであるとの判断のもとに、控訴人に対し、配転に協力するように説得したこと、以上のような事実が認められる」

として、転勤命令は人事権の濫用にあたらず有効であるとしています(最高裁平成4年10月20日判決・判タ 793号162頁)」(櫻町弁護士)

転勤を断れるか否かは、ケース・バイ・ケースであるようです。自分で判断がつかない場合は、企業法務に詳しい弁護士に判断を仰ぐことをおすすめします。

*取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

【画像】イメージです

*Graphs / PIXTA(ピクスタ)

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