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オタクアニメとジャパメタが最も熱かった1985年――Zガンダム、うる星やつら、LOUDNESS

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<文/山野車輪 連載第11回>

◆オタク向けアニメとジャパメタが最も熱かった1985年

80年代半ば頃は、日本社会が細分化されはじめた時期である。1984年、大衆の時代から“少衆”の時代に突入したという論を述べた藤岡和賀夫『さよなら、大衆――感性時代をどう読むか』(PHP研究所)が発表されている。またAV(オーディオ・ビジュアル)家電や家庭用ゲーム機などが浸透しはじめた時期でもある。

80年代は、さまざまな趣味が生まれ、そしてその幅や楽しみ方が、格段に広がりはじめていた時代だった。1983年、中森明夫が『漫画ブリッコ』(白夜書房)にて、マンガやアニメのファンやマニアらを「おたく」と命名している。それは蔑称としてのものだったが、オタクコミュニティがその後認知されていくにあたってのキーワードとなった。

「おたく」の象徴となるアニメが、1979年に放送されたTVアニメ『機動戦士ガンダム』である。『ガンダム』シリーズの起点であり、同作は“初代”と称されることが多い。以降、リアルロボットアニメ・ムーヴメントが盛り上がり、1985年には続編となるTVアニメ『機動戦士Zガンダム』が放映された。

ジャパメタは前回の記事で述べたがLAZYによる「ヘヴィー・メタル宣言」が1980年に出され、以降、LOUDNESSを筆頭にジャパメタ・ムーヴメントが盛り上がった。そして、1985年には、現在もジャパメタ界隈の頂点に立ち続けている聖飢魔II、SHOW-YA、ANTHEMの3バンドが立て続けにメジャー・デビューした。

1985年という年は、オタク向けアニメとジャパメタの、表舞台(一般層向けメディア)での活躍の最初のクライマックスと言える。今回は、その最も熱く盛り上がった年のアニメとジャパメタ、双方のシーンの動きを振り返ってみたい。

◆オタク必須のZガンダム、うる星やつら、メガゾーン23、月刊ニュータイプの登場

オタク・シーンには、前年の1984年に、3本の劇場用アニメ映画『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『風の谷のナウシカ』『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が出揃った。現在、いずれの作品もオタクを自称する者ならば必ず観ておかなければならない名作とされている劇場用アニメ映画である。この頃、1971~1974年生まれの“団塊ジュニア世代”が中学生になり、オタク向けアニメが経済的に成り立つ時期だったのだろう。

1985年の劇場用アニメ映画は、『うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラブ』『カムイの剣』『オーディーン 光子帆船スターライト』など、今となっては振り返られることのない作品ばかりだったが、TVアニメの方は、『機動戦士Zガンダム』『超獣機神ダンクーガ』『蒼き流星SPTレイズナー』など、オタクの間では今も語られる名作が揃った。『戦え! 超ロボット生命体トランスフォーマー』『ダーティペア』『忍者戦士飛影』もこの年である。

OVA(オリジナルビデオアニメ)の方でも、この年、『メガゾーン23』がリリースされ、以降、メカと美少女というフォーマットのもと、多くの作品が制作された。『銀河漂流バイファム』のOVA作品の3、4作目が発表されたのもこの年で、同作は多くのムック本が発売された。筆者も4~5冊は買ったし、さらにキャラクター・デザインを務めた芦田豊雄の『芦田豊雄イラストレーションズ』(みのり書房)まで買ったのだった。当時中学2年生だった筆者は、芦田豊雄をベースにオタク絵を学んだ。

前年から発売された『くりいむレモン』シリーズも、この年に盛り上がりを見せた。1985年には、ほかに『天使のたまご』『幻夢戦記レダ』『戦え!! イクサー1』など、多くのOVA作品が発表された。OVAは、1983年の勃興から2年経った頃で、機が熟していたのだろう。

また、アニメ雑誌『月刊ニュータイプ』(角川書店)が創刊されたのも1985年である。「ニュータイプ」とは初代『ガンダム』で登場した宇宙環境に適応進化した新人類を表す架空の概念である。『ガンダム』という作品固有のものであるから、筆者は当時「『Zガンダム』の放送が終了したらどうするんだろう?」と思い、オタクの同級生らとも話題にしたと思う。しかし、現在に至るまで『ガンダム』シリーズは続いている。こんな状況は当時、想像すらしていなかった。

◆1985年に最も話題の劇場用アニメの主題歌がジャパメタ・アーティスト

一方のジャパメタ・シーンでも、1985年には多くのアルバムがメジャー・レーベルからリリースされ、ヘヴィメタルという音楽が一般層にまで浮上した。

LOUDNESSはこの年1月、5thアルバム『THUNDER IN THE EAST』で世界進出した。同作は日本のオリコンチャートで最高4位、アメリカのビルボード総合チャートでは最高74位を記録した。また6月には劇場用アニメ『オーディーン 光子帆船スターライト』の主題歌とBGMを収録した12インチシングル「GOTTA FIGHT」をリリースした。

1月に公開された劇場用アニメ『うる星やつら3 リメンバー・マイ・ラヴ』の主題歌と、TVアニメ『うる星やつら』の4月からのオープニングテーマとエンディングテーマには、のちにSHOW-YAの2代目ヴォーカルとなったステファニーが起用された。彼女は、この年の夏に、6曲ものタイアップ曲を収録した2ndアルバム『HIDEAWAY』をリリースしている(詳しくは連載第7回を参照)。

1985年に話題となった劇場用アニメ3作品のうち、2本の主題歌が、ジャパメタ・アーティストだったことは、重要な歴史事実であると言えよう(繰り返すが、今となっては振り返られることのない作品である)。

◆ジャパメタ・アーティストの芸能界での活躍

ジャパメタ・アーティストが芸能界で活躍し始めたのも1985年である。連載第4回で述べたが、この年デビューした“歌謡メタル・エンジェル”の早川めぐみは、1年間で合計5枚ものアルバム・ミニアルバムをリリースしている。また、現在、国会議員を務めている女優の三原じゅん子や女子プロレスラーのダンプ松本も、へヴィメタルを唄った。

そして、7月から9月にかけては、聖飢魔IIとSHOW-YA、そしてANTHEMの3バンドが立て続けにメジャー・デビューした。いずれも、現在に至るまで高い知名度を誇るジャパメタ・バンドである。

へヴィメタルの先行者である浜田麻里は、年末にガチにヘヴィメタルな5thアルバム『Blue Revolution』を発表した。そして翌年以降は、ハードロックそして大衆向けロックへと音楽性を少しずつシフトさせていき、歌謡曲界への進出を開始した。現在は日本を代表するシンガーになったのはご存じのとおりである。

またアンダーグラウンド・シーンも盛り上がり、北海道からは後にE・Z・Oと改名し世界進出を果たしたFLATBACKERの1stアルバム『戦争――アクシデント――』や、現在、日本を代表するX(X JAPAN)の初のシングル「I’ll Kill You」が発表されている。REACTIONの1stアルバム『INSANE』は、インディーズながら売上1万枚を突破し、彼ら以降、インディーズ・メタル・シーンは本格的に盛り上がっていった。

◆ロボットアニメとハードロック/ヘヴィメタルは「絵」と「音」の表現方法の違い

『機動戦士ガンダム』(1979年)から始まるリアルロボットアニメと、LAZY『宇宙船地球号』(1980年)から始まるジャパメタ、それぞれのムーヴメント、そのピークはどちらも1985年だった。どちらも、一般層にまで影響を与えるほどに熱く盛り上がった。

80年代後半、オタク向けアニメはOVAシーンへ、コアユーザー向けのジャパメタはインディーズ・シーンへと舞台は移っていった。このように、アニメとジャパメタのムーヴメント勃興の時期とその期間は、非常に似ている。

ついでに言えば、それ以前の『マジンガーZ』に始まるスーパーロボットものは、ハードロックと比較できるだろう。スーパーロボットものからリアルロボットものへと進化した時期と、ハードロックからヘヴィメタルへ進化した時期は、1979~1980年と、奇しくもほぼ同じなのである。

さらに時代を遡れば、国産初のTVアニメの誕生は1963年の『鉄腕アトム』だが、その前年の1962年に英国でビートルズがデビューしており、TVアニメとロックという音楽ジャンル自体の黎明期が重なっている。こちらも比較対象として並べることができるだろう。

似ているのは、勃興の時期や期間だけではなく、そのほかさまざまな点があげられる。80年代初頭に、アニメを見てアニメ業界に参入した新時代のクリエイターは、大阪から出てきた者が多い。そしてジャパメタも、LAZYやNOVERAがシーンを作り、大阪からジャパメタ・バンドが出てきた。大阪のオタクおよびメタラー青年が、80年代前半期に新たなシーン、新たな時代を切り開いたのである。

アニメ創成期を代表する作品といえば『鉄腕アトム』や『鉄人28号』などが挙げられるが、どちらの作品名にも「鉄」が入っている。その後の『マジンガーZ』以降、超合金やウルトラ合金、Z合金ジンクロン、ダイキャストなどの玩具が大流行した。これらの鉄や合金、ダイカストなどは、金属つまり「メタル」である。ロボットアニメとヘヴィメタルは、重視される「質感」が同じであり、またロボットアニメにおけるスピーディな戦闘シーンと、ヘヴィメタルにおけるスピード・チューン、どちらも「速度」が重視されている(『超時空要塞マクロス』の“板野サーカス”とスラッシュメタルの比較ができよう)。

これらの例から、ロボットアニメとハードロック/ヘヴィメタルは同質のもので、オタクでメタラーの筆者としては、両ジャンルの違いは、表現方法が「絵」または「音」だったに過ぎないと考えている。

◆オタクカルチャーとジャパメタは同じ属性

現在、アニメに代表されるオタクカルチャーは萌えの方向に発展している。アニメでメカと美少女のフォーマットが完成したのは、前述のOVA『メガゾーン23』(1985年)だ。対して、ジャパメタにおけるアイドルメタルの完成は早川めぐみで、彼女も1985年に登場している。

メカと美少女のフォーマットの始祖にあたる作品は、1982年10月から放送されたTVアニメ『超時空要塞マクロス』であるが、ヘヴィメタルと美女の始祖は、1982年12月にデビューした本城未沙子と翌年4月にデビューした浜田麻里である。オタクカルチャーにおけるメカと美少女、ジャパメタにおけるメタルと美女の発現時期は、どちらも1982年であり、ここでも見事に一致する。

団塊ジュニア世代が成人したのが90年代前半のこと。この世代は人口が多く、またオタクも多いと思われる。何しろ『マジンガーZ』とそれに続くスーパーロボットアニメの直撃世代であり、『機動戦士ガンダム』とそれに続くリアルロボットアニメも直撃しているのだから。団塊ジュニア世代が成人して以降、アニメを観る大人も増え、アニメは子どもだけの娯楽ではないとする考え方が支持されはじめた。

そして2010年以降、日本のヘヴィメタル・シーンも、オタク・シーンと同じように、嬢メタルやラウド系アイドルなど、萌えの方向に発展している。

まだまだいくらでも類似性は指摘できる。オタクカルチャーとジャパメタは、比較対象として非常に面白い。上記の指摘が、なぜ、現在に至るまでされてこなかったのか不思議でならない。

すでに述べてきたように、オタクカルチャーとジャパメタは、アニソンのミュージシャンの間では、密接なつながりがあった。しかし、ユーザーの間ではこれまで交わることなくタコツボ状態が続いてきた。そろそろユーザー間の交流があってもいいのではないだろうか。

【山野車輪(やまの・しゃりん)】

昭和46(1971)年生まれ。平成17(2005)年『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)を出版し日韓関係のゆがみを鋭く指摘。『ニューヨーク・タイムス』、『タイムズ』など海外の新聞メディアでも紹介される。同シリーズは累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても2ちゃんねるや一部メタラーの間で有名。


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