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蒼井優史上「最も嫌な女」を堪能できる映画

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映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『彼女がその名を知らない鳥たち』


配給/クロックワークス 新宿バルト9ほかで全国公開中
監督/白石和彌
出演/蒼井優阿部サダヲ松坂桃李竹野内豊村川絵梨ほか

『凶悪』、『日本で一番悪い奴ら』など、近年、反モラルな映画を撮らせたら当代一で、ご贔屓の白石和彌監督が、蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊といった人気男女優を集め、そろいもそろって“ゲス男、ゲス女”を主要人物にした愛欲ドラマ。「僕は“R-15”映画専門ですから」と語り、お行儀の良い映画は決して撮らない白石監督の言やヨシではないか。いまや“日本映画の寵児”と呼んでも過言ではない。来年もヤクザ対警察のバイオレンス映画『孤狼の血』など“教育上よくない”彼の作品が公開されるので、お楽しみに。

さて今回だが、前記の俳優たちの既製のイメージをブチ破るキャラクターが続々。その中心人物が、昔の男が忘れられず、その面影を持つ妻子持ち男と寝る一方、下品で小汚い中年男を毛嫌いしながらも金を貢いでくれるから、と同棲中のヒロイン。普段は物販店などにいちゃもん付けて遠回しに金品を迫る悪質なクレーマー女でもある。おそらく蒼井優史上“最も嫌な女”だろう。ホントに後ろから蹴りを入れてやりたいほどの最低女なのだ。『家族はつらいよ』シリーズでの“デキた”嫁のイメージが好きな人はブッ飛ぶゾ。

同棲相手の中年男の阿部サダヲもこの最低女に固執する卑屈で暑苦しいオッサンを熱演し、同性として吐き気を催すほど。昔の男を演じる竹野内豊も女をポイ捨てにする野心家だし、松坂桃李も女を手玉に取って寝てナンボみたいなゲス野郎で、もはや“ゲズ男女大博覧会”の様相を呈している。このヒロインは、暑苦しい中年男に象徴されるクソ面白くもない現実のはけ口としてイケメン男の追憶と刹那にファンタジーを求める“痛すぎる女”なのである。

見る価値十分の好き嫌いがはっきり分かれる映画


こんな最低の男女の行状でも、クライマックスに近づくと、何だか共感、同情、憐憫を感じてくる、という触れ込みで、実際そう感じた人も少なくないはず。ボクも映画に描かれたこの手のどうしようもない男女には基本的に愛着を感じる方だが、今回の蒼井優、阿部サダヲの歪んだカップルには、ついぞ最後までシンパシーを感じなかった。生理的に受け付けなかった、と言ってもよい。

“泣けた”という人もいる、ラストの阿部の思い切った行動にも“勝手にやってろ”であった。しかし、中途半端ではなくこれだけ嫌える人物像を強烈に描ける白石監督の力業は大したもの。まんまと彼の術中にハマったのかも知れない。好きか嫌いかはっきり別れるだけに、試して見る価値十分。貴方の精神状態を揺さぶる映画である。


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