最新ニュース、芸能、ネットの話題をまとめ読み

 

自殺関連の事件が起きた今「生きてこそ」の意味を受け取れる映画

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『KOKORO』


配給/ベルギー・フランス・カナダ 渋谷ユーロスペースほかで上映中、全国順次公開
監督/ヴァンニャ・ダルカンタラ
出演/イザベル・カレ、國村隼、門脇麦ほか

現在、還暦前後の日本人俳優(それも脇役出身の)でピカイチのひとりが國村隼だろう。その苦虫をかみつぶしたような渋すぎるルックスで、『アウトレイジ』(2010年)や『忍びの国』(2017年)などでも強烈な存在感を示した。外国映画の出演も松田優作の熱演が光った『ブラック・レイン』(1989年)以来多く、“国際派”とも言える。英語だって流暢だ。

特に今年3月に日本でも公開され話題となった韓国映画『哭声/コクソン』(2016年)では、血塗られた村の“謎めいた男”を演じ、韓国で最も権威がある第37回青竜映画賞の男優助演賞、人気スター賞という日本人俳優初の快挙に輝いたほど。今回はベルギー生まれの四十路の女性監督ヴァンニャ・ダルカンタラからのオファーを受けての出演で、『哭声/コクソン』の悪魔的キャラとは対照的に、自殺名所のある海辺の村で、自殺を思いとどまらせることを使命とするヒューマンな元警察官ダイスケを演じている。同じ年の外国映画で、極端に違う役柄を引き受ける。そこが國村隼の真骨頂だ。

「沈黙」と「間」を大事にしている作品


フランスで夫と子供に囲まれ一見幸せな生活を送るフランス女性アリス(イザベル・カレ)は、対照的に自由奔放に生き、日本での放浪生活から帰ったばかりの弟とケンカ別れしてしまう。その直後に弟は交通事故死…。心にポッカリと穴の空いたアリスは、弟が生前熱く語っていた師と仰ぐダイスケという男と、日本での旅が気になり、来日し、ダイスケとも出会うが…。物質的価値観ではない東洋的考え方に惹かれる西洋人、という図式はよくあるが、自殺名所が舞台というのは珍しい。生と死が宿る美しく険しい断崖。このイメージ・ショットがフランス人女性監督の心を動かしたのだろう。

登場人物の背景や科白(セリフ)も最低限しか取り入れず、沈黙とか間とかを大切に演出しているところが何より。そして、國村隼は“沈黙”が似合う俳優だ。自殺に関して『少しはよぎることもあるが、すぐ否定する。妻が死んだときもそうだった』という短い科白があればそれで十分だ。ヒロインのアリスもまた多く語らない。断崖に立つ彼女の後ろ姿、風に揺れるパツキン。これだけで絵になる。絡みのシーンでは、望外のヌードまで披露してくれて、フランス女優はこういうの実に自然に見せてくれる。

先日、自殺願望の女性らを次々と殺害し、解体する凄惨な事件が起きたばかりだが、生きてこそ、呼吸してこそ、というメッセージはこの映画からも伝わる。『日本のスピリットに誠実でありたい』という監督の姿勢を、しっかりと感じる。


外部リンク(まいじつ)

Yomerumoをフォローする

Yomerumoから人気記事をお知らせします!

Twitter

ライフ最新記事

記事一覧

注目ニュース

> もっと見る


掲載情報の著作権はニュース提供元企業等またはGMOアドマーケティング株式会社に帰属します。記事の無断転用を禁じます。
すべての人にインターネット
関連サービス