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エマ・ワトソン嬢による“人類補完計画”が発動!! 『ザ・サークル』は理想郷か、ブラック企業か?

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 出会い系アプリで知り合った恋人にLINEで連絡し、食べログで人気のお店へ出掛ける。注文するのは、もちろんインスタ映えするメニューだ。自宅に戻ると、政治家や芸能人のTwitter発言がニュースとなって流れている。1日の終わりにFacebookの「いいね」の数を確認し、それから眠りに就く。SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は、すっかり日常生活の中に溶け込んでいる。エマ・ワトソン主演映画『ザ・サークル』は新しいSNSを運営する巨大企業を舞台にした、極めて現実味のある近未来サスペンスだ。24時間ずっとSNSと繋がり続けることで、孤立化することなく、秘密を抱えて悩むこともない理想世界を築こうとする若き主人公の野心と挫折を描いた注目作となっている。

本作の主人公であるメイ(エマ・ワトソン)が転職する先のIT企業「サークル」がすごい。若者たちが憧れる人気ベンチャー企業で、出来たばかりの本社はまるで大学のキャンパスのように緑豊かで広々としており、ガラス張りのオフィスはデザインも優れた快適空間そのもの。社員のことを「サークラー」と呼ぶ、とても自由な社風だ。社員食堂はGoogle社と同じく無料で食べ放題。週末には人気アーティストが出演するライブイベントやパーティーも開かれ、退屈する暇がまったくない。

メイが入社してしばらくすると、創業者でありカリスマ経営者のベイリー(トム・ハンクス)が全社員を集めてのスピーチを行なう。「全人類がひとつに繋がる完全なる社会を目指そう」。ベイリーが熱く語る企業理念に、メイたち社員は惜しみない拍手を送る。サークル社は福利厚生も充実しており、メイだけでなくメイの両親にも医療保険が適応されるとのこと。そのお陰で、病気がちだったメイの父親は最新の治療を受けることができ、すっかり元気に。この世の理想郷のような最先端企業の一員になれたことが、メイにはとても誇らしかった。

ある日、メイはスピーチ中のベイリーから壇上に呼ばれ、新サービス〈シーチェンジ〉の体験モデルにならないかと持ち掛けられる。〈シーチェンジ〉とは超マイクロカメラを衣服に付けたり、お気に入りの場所に設置することで、その人の見る風景や体験を多くの人とリアルタイムでシェアできるというもの。メイは〈シーチェンジ〉の体験モデルになることに応じるだけでなく、「シーチェンジカメラを24時間身に付け、私の生活を完全に透明化します!」と高らかに宣言する。トイレ休憩とバスタイム以外はすべて可視化するというメイの大胆な言動はたちまち話題となり、メイは世界中で1,000万人のフォロワーを持つアイドル的存在となっていく。

24時間オープンにし、プライベートをなくせば、ひとりでクヨクヨ悩まずとも気づいた誰かがすぐに励ましてくれる。秘密という概念そのものが消滅するため、犯罪も起きなくなる。自分が体験した感動を世界中の人たちと共有することができる。人類の祖であるアダムとイヴは、神に隠れてこっそりと知恵の実を食べたために楽園を追放されてしまったが、メイが実践するこの新しいライフスタイルが世界中に広まれば、人類は自分たちの手で新しい楽園を築くことができる。SFアニメ『新世紀エヴァンゲリヲン』(テレビ東京系)の中で提唱された“人類補完計画”のように、もう人類はそれぞれが孤独であることに悩み、罪の意識に苦しむこともなくなるはずだったが……。

SNS上での人気者となったメイは社内でも発言力を増していく一方、メイのもとから去っていく人たちもいる。メイが実家にテレビ電話をしたところ、元気になった両親はSEXの真っ最中だった。娘にSEXを見られただけでも気まずいのに、その映像はリアルタイムで世界中に流れてしまった。メイからの連絡に両親は応えなくなってしまう。大学時代の親友アニー(カレン・ギラン)はメイにサークル社への転職を勧めてくれた恩人だが、サークル社でのポジションをメイに奪われ、職場から去ってしまった。幼なじみのマーサー(エラー・コルトレーン)はSNSを嫌っており、音信不通となる。でも、メイは平気だった。なんせ、1,000万人を超えるフォロワーがメイの味方だったから。

理想社会として描かれるSNSの世界だが、そこで持ち上がるのは同調圧力という問題。Facebookでみんなが「いいね」を押していると、自分も「いいね」しないといけないような強迫観念にとらわれることがあるが、メイが実践するSNSでも同じ現象が起きてしまう。「全人類がサークルに加入し、ひとつに繋がる」という壮大なサービス〈ソウルサーチ〉のプロジェクトリーダーに選ばれたメイは、〈シーチェンジ〉の小型カメラとネットワーク力によって、指名手配中の犯罪者や行方不明者をたちどころに発見してみせる。この〈ソウルサーチ〉が本格的に普及すれば、人類は一体化し、神にもなれる。あるユーザーが、メイと幼なじみのマーサーがケンカ別れしたままなことを思い出し、〈ソウルサーチ〉の力を使って、メイとマーサーとの感動的な再会&仲直りを提案する。善意から発せられたこのアイデアは、膨大な数の「いいね」を集め、SNS上で巨大なうねりとなっていく。システムの推進者であるメイも、孤独の中に安らぎを見出していたマーサーも、想像を絶する善意の波に呑み込まれていく。

この世界はほんの少し視点を変えるだけで、まったく別なものに見えてくる。メイたち新入社員を熱狂させていたカリスマ経営者のベイリーだが、部外者には新興宗教の教祖のようにも映る。ベイリーは神の奇跡の代わりに、SNSという新しい聖典を若い信者たちに与えた。完全なる民意の反映、透明化された社会を実現させるはずだった〈ソウルサーチ〉だが、全員参加を強要する新しいファシズムの誕生だった。誰かにとってのユートピアは、別の誰かにとってのディストピアになりかねない。メイが夢見たSNSと実生活をリンクさせた理想世界は、システムを運営する側にとっても非常に便利で、都合のいいシステムでもあることを覚えておきたい。
(文=長野辰次)

『ザ・サークル』
原作・脚本/デイヴ・エガーズ 監督/ジェームズ・ポンソルト 
出演/エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガ、カレン・ギラン、エラー・コルトレーン、パットン・オズワルト、グレン・ヘドリー、ビル・パクストン
配給/ギャガ 11月10日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
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