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“生きる伝説”、ガーランド・ジェフリーズが詩情豊かに繰り広げるストリート・ロック。生々しくロマンティックなビート・サウンドに酔い痴れる秋の宵

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ストリートのメンタリティを体現するリアル・ロマンティック・ポエトリー。人種の坩堝、NYの日常を生々しいサウンドで活写するガーランド・ジェフリーズが、74歳にして奇跡の初来日を果たし、クラブ・ギグに臨んだ――。

約20年前、彼のライヴを観にNYまで行ったものの、キャンセルの憂き目に遭った僕にとって、まさに感涙もののミラクルなライヴ!ストイックなビートのロックンロールを基軸に、ブルーズ、ドゥー・ワップ、ソウル、レゲエ、サルサといったNYの“街の音”を全身から発しながら、鮮やかな切り口で都市生活者の歌を紡いできたガーランド。大学生時代からの盟友、ルー・リードに触発されてソロ・キャリアをスタートした70年代から、今年リリースした最新作『14ステップス・トゥ・ハーレム』まで、一貫してストリートに根差した音楽を発信してきたシンガー・ソングライターの彼。美しさも醜さも、すべて抱きしめながら愛情に満ちた視線でNYを俯瞰し続けるロックンロール詩人の歌は、聴く者の心を鷲掴みにし、大きく揺さぶってきた。もはや半世紀に及ぶ表現活動を重ねてきた彼からは、なぜか今も少年の匂いが漂う。そんな、ピュアでハートにダイレクトに響くナンバーの数々をセンス抜群のバンドと共に披露してくれた今回のステージは、僕たちに強烈な印象と深い余韻を残してくれた。

レス・ポール・ギターのブルージーなサウンドに引き寄せられるかのようにステージに上がったガーランド。4人のバンドが繰り出すタイトなリズムに敏感に反応し、骨太のグルーヴが会場を飲み込んでいく。リアルな日常を音象化した彼らのサウンドには何のギミックもない。大仰な音を鳴らすことのないストリート・サイズのザラついたアンサンブルは、しかし、決して小手先のテクニックでは出せない優雅さを滲ませている。シンプルなビートには豊かなニュアンスが宿り、エキゾティックなリズムは饒舌だ。それは先月、素晴らしいライヴを展開したサウスサイド・ジョニーのヴァイブとも重なる、シャープなキレとディープなコクを感じさせる、まさにキラー・チューン。酸いも甘いも噛み分けたベテランだからこその躍動感が息づいている。

ステージの上をところ狭しに飛び跳ね、観客としっかり手のひらを重ね、客席の女性をきつく抱きしめながら、NYに渦巻く喜怒哀楽を語りかけるように歌っていく。

それにしてもいい曲を書く人だ。贅肉を削ぎ落し骨格を剥き出しにしたような、ストイックな美意識をナチュラルに滲ませながら、じめついた路地裏の生活感をポエティックな言葉でシビアに、そしてロマンティックに紡いでいく。シェイプ・アップされたビートに乗った言葉にはノーブルな響きが仕掛けられていて、ファンキーなインテリジェンスが匂い立ってくる。その巧みなテクニックこそは、通りを見つめる繊細な感受性に裏打ちされた“賜物”だ。

アヴェニューを軽快に横切るリズムを湛えた「レゲエ・オン・ブロードウェイ」、錆び付いた観覧車が目の前に浮かび上がる「コニーアイランド・ウインター」、そして生前のジョン・レノンがサジェストしてくれたスロウ・アレンジで聴かせる「ヘルプ」のカヴァー……。4階の高さの鉄橋を走る地下鉄の振動や、チャイナタウンの鼻を衝く臭いや、110丁目のレイジーな雑踏に囲まれたような錯覚に陥る、まるで覗き込んだ万華鏡のようにせわしなく表情を変えていくサウンド。1ブロックごとに異なる音楽が聴こえてくるコスモポリタンのカオスな空気が濃密に染み渡ってくるようだ。そんな“エトランジェ感覚”さえも漂わせたステージに、観客は熱烈に反応し、それぞれの胸にストーリーを描いていく。演奏される楽曲に感情移入し、NYの詩情に個々の日常を重ね合わせながら“物語り”の中に意識を沈めていくような感覚が広がっていった90分。

先の週末には野外フェスでウォーミング・アップを済ませているだけに、バンドのコンディションもよく、ガーランドの表現力にも磨きがかかっていた今回のギグ。とびきり早期の再来日を熱望しているのは僕だけではないはずだ。“街角の吟遊詩人”が発する世界観を共有できる貴重なチャンスが再びやってくることを切に願いながら、僕は六本木を後にした。

◎公演情報
ビルボードライブ東京
2017年10月11日(水) <終了>
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30

Photo: Yuma Totsuka

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。暑さと涼しさを繰り返しながらも、着実に深まっていく秋。こんな時期に楽しみたいのが“しっとりワイン”。綺麗な酸と深いミネラル感、そしてメロウなタンニンで構成された味わいは、重すぎず軽すぎず、秋の味覚にも好相性。例えば赤なら北イタリアのピノ・ノワール、白なら南アフリカのシュナン・ブランなど、ひと捻りした産地とブドウ品種の組み合わせに掘り出し物が多いので、探す楽しみも3割増し(笑)。秋の夜長に、発掘した1本をゆっくり、じっくり味わうのも一興では?


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