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震災から生まれ、年間200公演を無償で行うローカルヒーロードキュメント小説『RYU PROJECT』

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ローカルヒーローが花盛りである。先日開催された「日本ローカルヒーロー祭」には実に350ものキャラクターが参加したという。もちろん、実際にはそれ以上の数のローカルヒーローが全国に存在するのだろう。

「破牙神(ばきしん)ライザー龍」は、東日本大震災がきっかけで生まれた宮城県のローカルヒーローだ。この9月、その歩みを小説形式で記録した書籍『RYU PROJECT 震災のあの日から』が刊行された(公式サイト)。固有名詞などは変えられているが、ほぼ事実に近いことが記されているという。版元は仙台の書店チェーン・金港堂出版部。


避難所の子どもたちのためにヒーローを作りたい!
2011年3月11日の東日本大震災からしばらく後のこと、仙台の小さな企画制作会社を営む主人公たちの元に一本の電話が入る。避難所の子どもたちのために、テレビで全国的に知られているヒーローを呼べないかという相談の電話だった。彼らがかつてそのテレビヒーローのキャラクターショーを手がけていることを知り、連絡してきたのだ。

しかし、手を尽くしてはみたものの、版権やビジネス上の問題などでテレビヒーローを呼ぶことはできなかった。それでも、家を失い、親を失い、我慢に我慢を重ねてきた子どもたちがあげた声に応えたい。そう強く思ったメンバーの中から、こんな声が上がった。

「だったら作りましょうよ! 版権にとらわれない、私達で自由に動かせるヒーローを!」

この一言から「破牙神ライザー龍」のプロジェクトがスタートした。

震災を設定に取り入れたローカルヒーロー
ローカルヒーローとはいえ、一からオリジナルのものを作り上げるには大変な労力とお金がかかる。その上、「テレビヒーローに匹敵するヒーロー」を作ろうとした分、さらに多くの労力とお金がかかることになった。テレビのヒーローを待っていた避難所の子どもたちに届けるのだから、テレビヒーローに見劣りのしないヒーローが必要だったのだ。

ここからは非常に地味な作業の積み重ねがひたすら続く。ボランティアで動けるメンバーを集め、設定と台本を作り、ヒーローのデザインを固め、造形や音楽の発注を行っていく。同時に資金集めもしなければならない。かつて東北地方でキャラクターショーに携わっていた11人の初期メンバーが本業の傍ら、精力的に仕事をこなしていった。

ストーリーには、あえて東日本大震災のことを取り入れた。しかし、震災で傷ついた子どもたちに、あらためて震災のことを伝えるべきなのだろうか? 専門医の判断を仰いだところ、とある医師の答えは「盛り込みなさい」だった。

「この震災は、自然災害としては、今まで私達が、経験したことにないような悲劇をもたらした。しかし、それは隠してはいけない。子ども達にはそれとしっかり向き合う力を身に付けてほしい。もちろん個人差があるだろう。十年かかる子もいるかもしれない。それ以上かかる子もいるだろう。でも、そのために君達はヒーローを作ろうとしているのだろう。頑張りなさい。そして子ども達をよろしくお願いします」

この院長の答えが本書の白眉であり、「破牙神ライザー龍」のコンセプトそのものを言い表している。子どもたちが震災に向き合うには10年以上かかるのなら、このヒーローショーも10年以上続けなければいけない。そのため、NPO法人化したり、パッケージショーを自治体や企業に販売したりするなど、継続する仕組みも作られていった。

一方、資金集めは苦戦を強いられていた。クラウドファンディングがまだ一般的ではなく、顔見知りの地元企業に協賛をお願いするしかないのだが、震災直後の会社に余裕などあるはずがない。それでもなんとか目標の500万円を達成することができた。地道な努力の積み重ねにほかならない。

被災した子どもたちのためのヒーロー・龍
熱烈なオファーによって、主題歌は数多くのヒーローソングを歌ってきた宮内タカユキが歌うことになった。本書には登場しないが、その後、挿入歌を声優の山寺宏一が歌い、敵役のデザインを故・韮沢靖が担当するなど、多くの著名人が協力している。韮沢はDVDのインタビューで「同じ年代の人がここまで頑張っているというので、ぜひやらせてください、という想いですよね」と答えていた。

2011年10月からは保育園などで無償公演をスタートし、初めての一般公開のショーも成功を収めた。「破牙神ライザー龍」は想像以上の反響を巻き起こし、保育園や避難所からは無償公演の申し込みが相次いだ。インターネットの匿名掲示板には「震災ビジネス」「補助金をもらって作っているらしい」「補助金を返せ」などの無根拠な罵詈雑言が並んだが、手紙をくれたり、実際に出会ったりした子どもたちの顔を思い浮かべて耐え抜いた。

彼らは2011年10月から年末にかけて50公演以上をこなし、現在も年間200回を超える無償公演を続けている。2016年5月からは、メンバーの癌の発症をきっかけに、全国の子どもたちを対象にしたヘアドネーションの活動もスタートした。

本書の口絵には、「破牙神ライザー龍」を取り囲む子どもたちのスナップが収められている。ショーを収録したDVDを見ても、(ストーリーはかなり複雑にもかかわらず)未就学児の観客が本当に多く、嬉しそうに歓声をあげていた。メンバーの一人はショーのリハーサル中、震災時74名の犠牲者を出した石巻市大川小学校の近くにある大川保育園の母親からもらった「5才の子どもにとっては龍が心の支えです」という手紙を肌身離さず持ち歩いていたという。龍の存在は、東北地方の子どもたちに根付いているようだ。

「破牙神ライザー龍」の公演スケジュールなどについては公式サイトを参照のこと。12月10日に東京・上野公園で行われるイベント「三陸なう」でフルパッケージショーが開催される予定(9日は握手撮影会のみ)。

また、書籍『『RYU PROJECT 震災のあの日から』を公式サイトから購入すると、2017年12月31日まで送料が無料になるキャンペーンを実施中。
(大山くまお)

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