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【漢字トリビア】「瞳」の成り立ち物語

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「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「瞳」。十月十日は目の愛護デー。目の健康を気遣いながら、「瞳」という字をひもといてみましょう。



「瞳」という字は「目」の横に、「立つ里」と書く「童(わらべ)」と書きます。
独特の世界観をもって漢字のなりたちに迫った白川静博士は、「童」という文字がもつ意味のひとつに、「こまごました雑多なもののない状態」をあげています。
たとえば、「童」の「山」と書く「童山(トォンシャン)」とは、中国語で草木のない禿山のこと。
そこから白川博士は「瞳」という漢字を、澄んだ状態をした「目」の様子を表している、と読み解きました。
「瞳」という文字には「ものを見る」という行為にこめた、いにしえの人々の理想が表れています。

昭和三年、学校を出たばかりのおなご先生が赴任してきたのは、瀬戸内海をのぞむ岬のとっぱなにある、村の分教場。
十二人の新入生を受け持つことになった彼女は、子どもたちが直面する現実に胸を痛めながら、精一杯の愛情を注ぎます。

『二十四の瞳』は、“母性の作家”と呼ばれる壺井栄の代表作。
「だれもかれも寸暇をおしんではたらかねばくらしのたたぬ村」の子は、家に帰れば子守りや麦つき、網ひきなどの労働が待っています。
教室は、彼らが子どもらしく学び、のびのびと歌い、無邪気に笑って過ごせる聖域。
出席簿を持ち、はじめて教壇に立った大石先生は、それぞれの個性にかがやく二十四の瞳を見て、思うのです。
「この瞳を、どうしてにごしてよいものか!」

十人ものきょうだいが居る貧しい家に育ち、苦労を重ねた壺井栄。
彼女は母親になった後、親のない子どもを幾度もひきとって育てたといいます。
青い海や空の雲、道ばたの花や小さな虫。
まっさらな瞳で世界を見つめ、子どもたちが自由な夢を描き、平和な世界を築いてゆけますように。
彼女がこの物語にこめた願いは、いにしえの人々が「瞳」という漢字にこめた祈りと、どこかでつながっています。

ではここで、もう一度「瞳」という字を感じてみてください。

新たな命の誕生を喜び、愛する人々と食卓を囲み、美しいものに触れる。
国籍や肌の色、信じる宗教は違っても、人が求める幸せはきっと同じはず。
「ひとみ」の語源は「人を見る」。
先入観を捨て、まっさらな瞳でお互いを見つめあえたなら、争いや憎しみの連鎖など、易々と断ち切ることができるかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『二十四の瞳』(壺井栄/著 偕成社文庫)

10月14日(土)の放送では「何」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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<番組概要>
番組名:「感じて、漢字の世界」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20~7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

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