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加計問題、安倍首相の贈収賄事件に発展か…設置認可前に133億円補助金、建設着工

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 9月6日に今治市の「今治加計獣医学部問題を考える会」(黒川敦彦共同代表)の市民が、加計学園に違法に市有地を譲渡し、補助金の支給を決めた菅良二市長を相手取り、その撤回を求めて住民訴訟を提訴した。山場を迎える加計問題が、安倍首相による衆議院解散・総選挙の引き金になった点を追跡し、現状の課題を整理したい。

9月19日、安倍晋三首相は自民党の二階俊博幹事長に対して衆院解散を通知し、9月28日の臨時国会冒頭での解散を行った。「もり・かけ(森友・加計)問題」隠しとの指摘が相次いでいる。この「もり・かけ問題」は、安倍首相による縁故者への便宜供与、国家の私物化が共通した問題である。公金を不正に流用し、便宜を図っていたのだが、この問題は安倍首相による大義なき解散にどのように影響を与えたのか。

森友問題については、すでに本サイトで報じたように、9月15日に東京地検特捜部が2つの市民団体の告発状(それぞれ背任罪と公用文書毀棄罪)を受理し、大阪地検特捜部に移送し、財務省などへの捜査が不可避となった。いよいよ森友問題の核心である2万トンの埋設ごみを仮装して8億円を値引き、国有財産に損害を与えた背任罪とそれを隠そうとした公用文書毀棄罪に捜査が入り、その最大のターゲットが佐川宣寿国税長官(前財務省理財局長)である。もちろん、便宜供与した安倍首相への捜査に進展する可能性もある。

加計問題が安倍首相を衆院解散に追いやった要因として、次の3点が挙げられる。

(1)衆議院予算委員会閉会中審査における質疑での安倍首相の答弁

食事とゴルフを何度も共にした安倍首相と加計孝太郎加計学園理事長。料金負担は「私の時も先方の時もある」と利害関係者からの接待(賄賂)を認め、関連して「加計学園の特区申請を知ったのは、今年(2017年)1月20日」と、これまでの発言と異なる内容を述べた。

(2)新設を認めるかどうかを審議する文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)の「認可保留」決定と継続審査の上で、10月下旬に答えるとした。
(3)今治市での住民監査と行政訴訟の動き、そして建設設計図からわかってきた獣医学部の実態解明の進展。

7月24日に開かれた閉会中審査における加計学園問題への集中審議質疑のなかで、民進党の大串博志議員の質問を受け、安倍首相は、加計氏から接待を受けていた事実を認めた発言は決定的であった。その後の「今年の1月20日に加計学園の特区申請を知った」という発言は、これまでの答弁と違える発言だった。

参議院予算委員会(5月9日)や同決算委員会(6月5日)での答弁では、「国家戦略特区に、その申請を今治市とともに出された段階で承知した」と答え、今治市が獣医学部新設を提案した15年6月に知っていたと答えていた。質問主意書での同様の質問への回答とも内容が異なっており、以前から加計学園の特区申請の話を聞いていたという話になれば、賄賂―贈収賄の構図が成り立ってしまうため、それを避けるための発言だったと考えられる。

8月25日、文部科学省の設置審は、加計学園の認可申請を「認可保留」として審査継続にし、結論を10月下旬に持ち越した。この審査継続によって、当初予定されていた衆院選3補選(新潟、愛媛、青森)は重要な意味を持つことになり、補選の行方次第によっては安倍首相の政治力が低下し、継続審査の結果にも影響することが考えられた。そこで安倍首相は、総選挙ならば議席数は減っても影響力は継続できると考え解散に至ったとみられる。

9月6日の住民訴訟では、学園への市有地(評価額36億7500万円)の無償譲渡、および建設費に対する最大96億円の補助金の撤回を求めていた。「今治加計獣医学部問題を考える会」は、加計学園建築物の設計図を入手し、この補助金によって建設される施設単価が通常の2倍以上に見積もられていたことを知り、安倍首相による便宜供与の実態を各種メディアを通して明らかにしていた。結局、加計学園は単価を倍額以上に水増しした建設費の「半額」の補助金を受け取ることにより、実質1銭も使わずに学園建設できる供与を受けていたことになる。

この住民訴訟は、加計問題での「便宜供与」の実態に直接触れる訴訟であり、いよいよこの問題が裁判・行政訴訟で争われることになった。しかも、この便宜供与の開始のボタンを押したのは安倍首相であり、これまで国が隠してきた内閣府や官邸と今治市との事前の打ち合わせの内容が明らかになってくれば、利害関係者への便宜供与が贈収賄事件へと発展する裁判にもなってくる。

安倍首相は国家戦略特区によって岩盤規制に穴を空けたというが、実態は腹心の友である加計氏が理事長を務める加計学園に巨額の公金をつぎ込むという、国家・行政の私物化でしかなく、だからこそ解散・総選挙に入ったといえる。

●今治市民が訴えた住民訴訟

9月6日、松山地方裁判所に住民訴訟を提起した市民は、「今治加計獣医学部問題を考える会」の共同代表の2人であり、その一人の黒川敦彦氏は、今回の訴訟の目的を次のように語る。

「訴状に書いたように、今治市が譲渡した評価額約36億7500万円の返還と、最大96億円になる高額な補助金の支出の差し止めです。住民監査請求した後にも、調査の結果、ひどい実態がわかってきています。」

補助金額は、建設費192億円の半額を加計学園、残りの半額のうち県が34億円、今治市が62億円を負担し、県が出さない場合は市が96億円を支給する内容となっていた。しかし県は、その予算化すらしていないため、そのまま今治市が96億円を負担することになりかねない。

さらに黒川氏は、「市は、補助金支給の決定をした3月3日の段階で、担当職員が建設費の見積書すら入手していなかったことがわかりました。金額の妥当性を検討すらせず、加計学園の言うがままに補助金金額を決定していたのです。」それに加え、「専門家によれば、今回のような鉄骨を基礎にした建設物では、建設単価は坪当たり70万円前後、高くても100万円ほどにしかならない。ところが加計は約150万円もかかると算定していたのです」と事実を語った。

岩盤規制に穴を空けるどこか、従来の公共事業の利権に群がる官民癒着構造そのものでしかなかったといえよう。

今治市から133億円もの公金がつぎ込まれるという点が、ほとんどメディアでも問題となっていないが、6月12日に住民監査請求を行った「今治加計獣医学部問題を考える会」では監査請求の前に、今治市が取り組んだ大学誘致にあたり、市民がどのように考えているかを電話により市民アンケートを取り(約5700軒)、その結果、全回答826件の内、「住民のためにお金を使ってほしい」という声が約6割を占めていた。1300億円もの借金を抱えた今治市は、その赤字を1割近く増やすような今回の事業計画について、市議会で十分な論議をすることもなく補助金等の支給を決めていた。

しかも加計は、設置認可の権限を持つ文科省に申請した翌日から、その認可の結果を待たずに工事を開始していたのである。法律上の手続きも行わず、無償譲渡した土地の上に補助金を頼って建設する獣医学部校舎と研究施設。文科省の認可が下りなかった時には、今治市は、無償譲渡した38億円のほか、その時点まで支払った補助金分の損失を出すことになる。

監査請求はその点を問うものであったが、今治市の監査委員会の棄却の決定理由は、「認可が下りる前に補助金の支給をしてはいけないという法律はない」という驚く内容であった。法令に基づき事業を行うことは、地方自治法(第2条第14項)の定めでもあり、認可が下りていない事業について公金を支給することは、この法律に違反する。ところが監査委員会は、「支給してはいけないという法律はないからやってよい」という決定を下していた。

学部新設の許認可権を持つ文科省が、設置認可について現在進行形で審議しているものに対して、認可されるものとして工事に入るのは、法律上の手続きを無視した違法な既成事実づくりであるといえる。2018年4月1日の開校を考えた加計学園の勝手な都合に合わせる措置でしかなかった。内閣府でさえ、今の手続きの進行状態の下では19年4月開校が順当と語っていたのである。

自治法上は、住民は自分が住む自治体(都道府県や市町村)における不当なお金の使い方の是非を求めて住民監査請求を行い、それが棄却や却下されても、監査請求を行ったことを条件に、裁判に直接訴える住民訴訟を行うことが保証されている。住民監査請求は、住民訴訟を行う上での「前置」といわれる。

9月6日、今治市の市民は、先に提出していた住民監査請求が棄却されたのを受けて、同趣旨で松山地裁に訴訟を起こしたのであった。筆者が専門的に取り組んできた清掃工場の焼却炉建設への補助金の仕組みと比較しても、考えられないような自治体による手厚い補助金である。市町村が建設する焼却炉への補助金は、通常国が3分の1(発電効率が高い場合は2分の1まで)が補助される。しかし市町村の事業であっても、都道府県はせいぜい10分の1ほどでしかない。

それが建設費の半分を、市が責任を持って支給するというのである。これでは、規制緩和による有望な民間事業の掘り起こしというよりは、公金の投入による特定の民間企業へのテコ入れとなってしまう。

行政訴訟が始まることによって、このようなずさんな行政運営の実態とともに、内閣府からの指示があってのことか、それとも勝手に今治市が忖度した結果なのかが明らかになってくるであろう。

●設計図からわかった「世界最先端」のお粗末な実態

では、そこまでして開校しようとしている岡山理科大学獣医学部の教育・研究内容は、世界の最先端をいく充実した内容になっているのであろうか。前出の黒川氏らの市民団体が入手した建設物の設計図からは、鳥インフルエンザなどの感染症防止のための世界最先端の研究という建前とは裏腹に、ひどい実態がわかっている。

「当初の計画では、最上階にはワインセラーやビールディスペンサーが設置され、100人規模のパーティーが可能な設計になっていました。まったく研究施設には似つかわしくないものです。その後、これについては設計変更したということです」(前出・黒川氏)

「ワインセラーやビールディスペンサーが大学内に置いてある例は、聞いたことがありません。学生数が数万、数千人の大学なら、来賓施設があってもおかしくないでしょうが、生徒数が1000人にも満たない獣医学部のキャンパスに宴会場をつくる必要はありません。来賓パーティーをやるなら市内のホテルを借りればよい。これは文科省の設置基準に引っかかりますよ。加計学園は、教育や研究の内容よりも接待を気にしていると思われても仕方がない」(寺脇研・京都造形芸術大学教授/「日刊ゲンダイ」<8月21日号>より)

黒川氏が続ける。

「先端バイオ研究施設として鳥や人間に共通する感染症、鳥インフルエンザや口蹄病などの研究施設として必要な防御施設、バイオハザード施設が、お粗末そのものであり、設計仕様からみると有害なウイルスの感染防止用施設として設計されていないことがわかりました」

筆者は月刊誌「紙の爆弾」(鹿砦社/8月号)でも取り上げたが、加計学園が地方都市の首長を頼り、土地の無償譲渡を受け、なおかつ100億円前後の補助金を受けて学校建設するのは、銚子市の千葉科学大学(薬学部、看護学部)に続き、今回の今治市の事例が2件目である。まるで大学設置ビジネスが本業のように見えてくる。

●文科省の設置審、認可決定までの壁

これまでの経緯を改めて整理してみよう。加計学園は3月31日に文科省の設置審に認可の申請を出し、8月25日に出された設置審での審査結果は「認可」とはならず、「審査継続」「認可保留」となった。計画の見直しが必要になり、10月下旬以降に延期されることになった。設置審における審議において問題となっているのは、以下の点である。

(1)閣議決定された石破4条件(1.既存の獣医師養成でない構想、2.ライフサイエンス<生命科学>など獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要、3.既存の大学や学部では対応できないこと、4.近年の獣医師の需要の動向)を満たすのかが問われた。特に新設獣医学部が既存の獣医学部では対応できない新たな研究内容を備え、獣医師の新たな需要が見えるかどうか。この2点は、大変重要な審議点であり、本来、国家戦略特区諮問会議の討議のなかで行う必要があったが、確認がされていないため、設置審での内容の検討が必要になる。

(2)石破4条件を守っていない場合、安倍首相が国家戦略特区諮問会議の議長として加計学園を諮問したこと自体、内閣は閣議決定に縛られるという内閣法違反に違反している恐れがある。

(3)今回の獣医学部設置計画や建設設計の内容や職員配置が適切か否か。加計学園が18年4月1日の開校に向けて、施設建設計画や学生募集、運営計画などの工程表、設計図、特に研究施設、バイオハザード(防止)施設の計画内容の評価。

(4)設置審での「設置認可」を待つことなく、今治市の公金を使って建設が進められていることについての是非。

森友問題と加計問題は、前者は刑事裁判、後者は行政訴訟とかたちは違うが、裁判で正式に争われることになった。それが、安倍首相を衆議院解散に走らせた。国家の私物化、そして解散権の乱用を問う総選挙といえよう。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

【加計問題をめぐる経緯】
2015年6月 獣医学部新設に関して閣議決定。「石破4条件」
2016年1月 今治市が国家戦略特区に
     3月 京都府と京都産業大学が、獣医学部新設を提案
     6月 前川氏、文科省事務次官に就任
  9~10月 「総理の意向」内閣府からの働きかけ
    10月 文科省、石破4条件堅持の見解
 11月1日~ 加計学園、新設予定地でボーリング調査
  11月9日 国家戦略会議で「広域的に獣医師系養成大学等が存在しない地域」
に限り新設を認める方針決定。実質加計学園にのみ絞られる
2017年1月 特区事業者に加計学園を決定。(20日)
   3月3日 今治市市有地の譲渡や建設費補助を正式決定
  3月31日 加計学園、文科省に設置認可申請
     4月 加計学園、今治キャンパスの工事に入る
  5月17日 朝日新聞 「総理の意向」メモ スクープ
     5月 菅官房長官 「怪文書」、 文科省 同文書「確認できない」
  5月25日 前川前次官 「総理のご意向」文書はあった。記者会見
        ― 読売新聞 前川氏について「出会い系喫茶」記事―
     6月 現役職員 次々と証言
   6月8日 文芸春秋 「驕るな!安倍」前川次官告発文書。
   6月9日 菅官房長官 定例記者会見 文科省再調査発表
  6月12日 今治市民 住民監査請求
  7月24日 衆議院閉会中審査 安倍首相の加計氏から「接待」を受けたことがあると加計学園の特区申請を知ったのは、「1月20日」の訂正発言
  8月10日 今治市監査委員会 監査請求を棄却
  8月25日 文科省・設置審「認可保留」、審査継続。10月下旬に見解との発表
   9月6日 今治市民 監査請求をベースに行政訴訟

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