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ロヒンギャ迫害に沈黙する“民主化の象徴”スー・チー氏、専門家「活動家の頃とは別人だと思った方がいい」

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 ミャンマーで暮らす少数派のイスラム教徒「ロヒンギャ」と呼ばれる人たちが、激しい迫害を受けている。この問題で、目立った対応をせず批判されているのがアウン・サン・スー・チー氏だ。民主化の象徴であったはずのスー・チー氏は、なぜ沈黙を続けているのか。

ミャンマー・ラカイン州では、先月25日から治安部隊とイスラム系少数派ロヒンギャの武装集団の間で衝突が始まり、今も続いている。その最中の30日、ロヒンギャが暮らす村を取材したANNのカメラには、いたるところで家から火が上がる様子が映され、一時は銃声が鳴り響いた。衝突の爪痕は深く、状況はエスカレートしている。


 「ナイフで村人が殺害された。向こうの村でも殺害された」と話す地元住民。これまでに武装集団約370人、市民など約30人が死亡しているという。隣国のバングラデシュなどに難民として脱出したロヒンギャは37万人にのぼるとされ、赤ちゃんを抱えて川を渡る人の姿も見られた。

こうした中、ロヒンギャが暴力を受けている問題を協議するため、国連安全保障理事会は緊急会合を開く予定だという。はたして、ミャンマーの事実上の指導者とされるスー・チー国家顧問はどのように対応するのだろうか。

スー・チー国家顧問は7日、「政府はすべての国民を守るためだけにベストを尽くしています」との声明を出したが、ロヒンギャ問題には触れず沈黙したままだ。

■ミャンマーから逃れ日本で暮らすロヒンギャ難民


 仏教徒の多いミャンマーで、イスラム系少数派のロヒンギャはバングラデシュからの不法移民とされ、長く差別と迫害を受けて来た歴史がある。

 衝突が起こる前の7月、ミャンマー・ラカイン州は落ち着いている様子に見えたが、この時も村人は治安部隊による迫害を主張していた。紛争などから逃れるため、他国に逃れる人は後を立たない。

日本にもロヒンギャ難民のコミュニティがある。群馬県館林市には1990年代からロヒンギャ難民が住み始め、現在約230人が暮らしている。『AbemaPrime』(AbemaTV)は、日本で暮らすロヒンギャの人々を取材した。

25年前に日本に来たというアウン・ティンさん。ミャンマーの現状について「私たちの民族はミャンマー国内で今すごい大変な状態。迫害と人権侵害、人種差別、けっこう長い間、私たちに降りかかっていると思います」と話す。

 また、来日19年目のファリアメさんは「私たちの家族は20人くらいいます。妹とお姉さんとお兄さんは家を全部燃やされて、みんなバングラデシュに帰っちゃった。ひとりでミャンマーに残っているお姉さんがすごい病気。私はすごく頭が痛い」と嘆いた。

ファリアメさんの息子ファハリさんも「世界中が民族云々ではなくて、子供とか女性とか、もっと人権を大切にしてほしい。迫害をなくしてほしいです。ミャンマーだけじゃなくて、シリアとか色々なところではこういう現象が起こっているということを知って欲しいです」と訴えた。

■迫害の背景にイギリスの植民地支配


 長らく軍事政権が続いていたミャンマー。民主化運動の象徴として活動していたスー・チー氏が事実上トップとなる政権が昨年発足した。ミャンマーの人口約5141万人のうち、宗教は仏教徒が9割、民族はビルマ族が7割を占める。

 一方のロヒンギャは推定人口100~130万人超。ミャンマー政府は国籍を認めず、移動の自由など様々な制限を課している。国際政治学者の六辻(むつじ)彰二氏は「国籍を認めないということは、つまり自分たちの国民ではないわけだから、国民として認めるべき権利をロヒンギャに認める必要はない。国内にいるのは不法定住だから追い出したって問題はない、という話になる」と説明する。

ロヒンギャは無国籍で、パスポートはなくどの国にも属することができない。たとえミャンマー国内で生まれ育ったとしても、政府はミャンマー国籍を認めないという。

 ロヒンギャが迫害を受ける背景について六辻氏は「独立する前のビルマ(ミャンマー)はイギリスの植民地だった。イギリスの植民地支配というのは、その土地の一部の人間に大多数の人間を支配させることが多くて、キリスト教徒やイスラムの少数民族を使って多数派の仏教徒のビルマ人を支配していた。独立した後は立場がひっくり返るわけだから、少数民族を迫害するようになる」と述べた。

また、迫害と軍事政権の関係については「軍事政権以前から、ロヒンギャに対して“国民”という立場は一貫して認められてこなかった。仏教徒とムスリムとの間で確執があったのだろう。キリスト教徒の少数派もいるが、独立した段階でキリスト教徒を迫害してしまうと、イギリスや欧米諸国との関係がこじれやすい。イスラム教徒というのは、国際的に立場が弱かった」と話した。

スー・チー氏の声明「政府はすべての国民を守るためだけにベストを尽くしています」の国民に、ロヒンギャは含まれていない。

■民主化でも軍事政権は継続


 今夏、ロヒンギャの村に入ったANNのカメラは、焼き払われた村の様子や治安部隊に迫害を受けていると話す女性たちを取材した。女性たちは、口々に「軍にレイプされた」「殺害される」と話したという。

 ミャンマー政府がここまで激しく制圧する理由について、六辻氏は「軍事政権の継続」を指摘する。「軍事政権の時代からビルマ化政策というものが行われていた。少数民族が暮らす土地を治安部隊が抑えて、そこにビルマ人を移り住ませる。ミャンマーは2008年に民主化したということになっているが、半分軍事政権のままであるという認識の方が正しいと思う。スー・チー氏が責任者であっても、結局軍の意向は抑えられない。軍は軍事政権時代から行ってきた治安部隊による鎮圧を加速させている」と見解を述べた。

また、民主化によって選ばれたスー・チー氏の立場をあげ、「彼女を支持している多数派の考えが『ロヒンジャを排除すべき』というものであれば、まさに民主的な国民の付託を受けたリーダーはそうせざるを得なくなる。民主的なリーダーであるがゆえに、国民側の意向と全く無関係の行動はとれない」と指摘した。

ミャンマーからバングラデシュなどに逃れた人は累計で約37万人という報道もある。そうした中、ロヒンギャの一部グループが武器を手に治安部隊と衝突し、ミャンマー政府はテロ組織に指定したという。しかし、武装化は最近始まったわけではなく、第二次大戦中に武器を手にしたことがきっかけとも言われている。その後、1948年にロヒンギャの一部が分離独立を求め武装化。また現在、イスラム過激派ムジャヒディンやイスラム国の関与も報道されている。


ミャンマー国内の報道について六辻氏は「報道の自由がかなり制限されているため、出てくる数字がミャンマー政府の発表によらざるを得ない。そうすると仏教徒の被害は大きく、ムスリムの被害は小さく報道される。操作されているというのはまず間違いない」と懸念した。

■現在のスー・チー氏は軍事政権の“飾り”


 そんななか、民主化の象徴とされるスー・チー氏が苦しい立場に置かれている。

スー・チー氏は1989年、民主化を訴え軍事政権に反発したとして自宅に軟禁されていた。その後も民主化を訴え続けたスー・チー氏は1991年、自宅軟禁中にノーベル平和賞を受賞。「人権を軽視すれば人間の良心を踏みにじる野蛮な行動をもたらす」と、人権の大切さを訴えた。しかし、激化するロヒンギャ問題については沈黙したままで、その態度に批判が高まり、スー・チー氏のノーベル平和賞取り消しを求める署名が36万人以上集まっているという。さらに、歴代ノーベル平和賞受賞者が不満を伝えたり、ダライ・ラマ14世もスー・チー氏に「平和的解決」を求めている。

 現在のスー・チー氏について六辻氏は「活動家だった頃とは別人で、政治家だと思った方が良い。そうすると、支持層あるいは国家の基幹となっている軍の意向は斟酌しないといけない」と見解を述べた。

また、日本で暮らすロヒンギャ難民のアウン・ティンさんもスー・チー氏を「軍事政権の飾りになっている」と指摘する。

「今回の事件で、アウン・サン・スー・チーはロヒンギャ民族を『テロリスト』『武装グループ』と表現している。私たちの考えは、テロリストだったらちゃんと法律で捕まえて、刑務所に入るなら入ってもいい。でも、家を焼かれて村を燃やされて、女性がレイプされて、それはどんなテロリストに対する制裁ですか」と話すアウン・ティンさん。

 アウン・ティンさんは、スー・チー氏解放のために日本で25年間活動を行ってきたという。「夜寝られなかったこともご飯を食べられなかったこともある。その私たちのリーダーがこんなことを喋るとは絶対思わなかった。今回のことで気分は悪くなっているが、軍事政権のやり方という考えもある。今のアウン・サン・スー・チーは飾りになっていると思う。アウン・サン・スー・チーに対する気持ちはまだ変わっていないが、このままいくと私の気持ちも変わってくると思う」と話した。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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