最新ニュース、芸能、ネットの話題をまとめ読み

 

“非連続”の挑戦 上野松坂屋「秋の陣」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


「尾張の大うつけで終わるか、天下を取るか」――。映画『風雲児 織田信長』(1959年)で、稲葉山城(岐阜)攻めを前に、萬屋錦之助演ずる信長が馬上で家臣に激を飛ばす名シーン。この戦いで勝利した信長は嚢中の錐(キリ)よろしく、戦国の世を制し、晴れて天下人になる。最期はダンスユニット・エグスプロージョンのネタでおなじみの「本能寺の変」で逝く。

エグスプロージョンは、信長から頭をたたかれカツラを落とされた家臣・明智光秀がその辱めの恨みを晴らすクーデターとして本能寺の変を絵解きしているが、真相は諸説あって決定打はない。信長自身がクーデターの首謀者を光秀と断定したかも不明だ。

あまたある信長本のタネ本「信長公記」には、ときの声と鉄砲の音を聞いた信長が「これは謀反か、いかなる者のたくらみぞ」と部下に下問する場面がある。「明智が者と見え申しそうろう」と答える家臣の森蘭丸に、信長はただ一言「是非に及ばず」と言うのみ。信長の反応はそっけなく、その真意は推し量れない。435年後の現在も「本能寺の変」の真相は、光秀首謀者説も含め、藪の中にあり、歴史ファンの探究心をくすぐり続けている。

「明智が者」と推測(?)を伝え光秀クーデター説の「有力証言」を残した森蘭丸は、本能寺の変で討ち死にした。

だが信長の部下にはもう一人の「蘭丸」がいた。伊藤蘭丸祐広だ。そしてその子、伊藤蘭丸祐道(すけみち)は、本能寺の変から29年後に名古屋に呉服小間物問屋(いとう呉服店)を開業する。これが現在の松坂屋創業とされている。この親子二代の「蘭丸」はいずれも「信長が名付け親」と松坂屋のホームページは伝える。討ち死にした蘭丸は「光秀クーデター説」を残し、生き抜いた蘭丸は松坂屋を生み落としたといえようか。

家臣を通じた信長と松坂屋のつながりは意外な気もするが、「楽市楽座」で商工業を大いに振興したとされる信長の薫陶が父から伝えられ、子・蘭丸の“商才”が花開いたとしてもおかしくない。

その松坂屋が大丸と経営統合して共同持株会社J.フロントリテイリングを発足させたのはいまからちょうど10年前の2007年9月。その後パルコのグループ化を経て10年目の秋を迎えるJ.フロントリテイリングは、上野松坂屋南館跡地(東京都台東区)に、パルコを中核に映画館やオフィスフロアを備えた地下2階、地上23階の複合商業施設「上野フロンティアタワー」を11月4日、オープンする、と発表した。

少子高齢化やライフスタイル、商品購入方法の多様化など百貨店を取り巻く環境は激変している。百貨店の「戦国時代」に立ち向かうにふさわしい“新しい城”の誕生といえるだろう。

完成間近の「上野フロンティアタワー」で9月14日開かれた記者会見には、J.フロントリテイリングの山本良一社長や大丸松坂屋百貨店の好本達也社長、パルコの牧山浩三社長が顔をそろえ、「上野の新たなランドマークにする」とそれぞれ意気込みを述べた。

延床面積はおよそ4万1000平方メートル。地下1階には松坂屋が入り、2014年に大型リニューアルを終えた隣の松坂屋上野店「本館」と地下でつながる。本館との架け橋は3階、6階にも設ける。1~6階は中核テナントの「パルコ」、7~10階は「TOHOシネマズ」が8スクリーン、1400席で劇場展開する。12~22階はオフィス用賃貸フロアで、すでにすべて埋まり空きはないという。オフィス需要の読みがズバリ当たった。

記者会見で「上野フロンティアタワー」にかける思いを熱く語った山本社長は、百貨店の概念に安住したままでは「50年後、100年後の未来はない」と「非連続の挑戦」を強調した。戦国武将の表情も「かくや」と思わせる厳しさが笑顔の中にも時折うかがえる。

今年4月に松坂屋銀座店を「GINZA SIX」として“再生”した山本社長は、11月の「上野フロンティアタワー」、2019年の新生「渋谷パルコ」、「大丸心斎橋店新本館」の開業と未来を掛けた気の抜けないビッグプロジェクトを抱える。日本の都心部に次々と作り出す新たなにぎわいは、さながら現代版「楽市楽座」の趣がある。

上野フロンティアタワーの高層階からは上野の山はもちろん、天気が良ければ富士山も望めるという。上野の山の前で「非連続の挑戦」を唱える山本氏は松坂屋でなく大丸出身だが、稲葉山城攻めを前に激を飛ばす信長のイメージとどこか重ならないか。

「百貨店で終わるか、未来を取るか」――。上野の山を目の前に、そう激を飛ばしているように見えて仕方がない。

外部リンク(OVO)

Yomerumoをフォローする

Yomerumoから人気記事をお知らせします!

Twitter

トレンド最新記事

記事一覧

注目ニュース

> もっと見る


掲載情報の著作権はニュース提供元企業等またはGMOアドマーケティング株式会社に帰属します。記事の無断転用を禁じます。
すべての人にインターネット
関連サービス