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岡崎京子と小沢健二と水中、それは苦しい『下北沢ダイハード』今夜8話

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毎回まったく違う物語が繰り広げられ、見るまで(回によっては見始めても)これがどんなジャンルのドラマなのかわからないおもしろさがある『下北沢ダイハード』。なかでも異色というべき第6話から第8話を振り返りたい。


第6話の主役は"場"のエネルギー
頭っからSFだったのが第6話「未来から来た男」。登場するのはいきなり全裸の佐藤二朗である。彼はシーモキーター。2037年、平和で合理的な世界を構築したスーパーコンピューター、mamazonによって過去に送り込まれた存在。この世界の抵抗勢力、サブカルゲリラの抹消のため、過去に遡ってその首謀者であるコヤマ・サラとサブカルとの出会いを防ぐのだ。

と、ここまで要約を書いていても、突拍子もなさすぎて不安になる。だが、言ってしまえばこの回は「場」の物語だったように思う。主人公はサラでもシーモキーターでもなく、下北沢のヴィレッジヴァンガード、その場所だ。ガイドブックを握りしめて上京した田舎者が、ヴィレヴァンでサブカルという「上から抑圧されてきたカルチャー」に出会う。そこには新譜新刊に混じって、数十年前の音楽やマンガがあふれている。同じようにサブカルチャーを愛する人々が集う。そして片桐仁もいる。そんな場にあふれるエネルギー。これこそが下北沢の魅力なのだろう。

90年代サブカルまみれ
サラがサブカルと出会うきっかけとなる一冊が、岡崎京子の『東京ガールズブラボー』だ。92年に刊行されたマンガだが、描かれている女子高生たちは80年代前半を生きている。いずれにせよ、サラが生まれるはるか昔の話だ。クライマックス、シーモキーターがサラにこの一冊を手渡す瞬間に小沢健二『ラブリー』のイントロがかかったのがあまりにも90年代で、サブカルゲリラになり兼ねない者としては声を上げずにはいられなかった。ほかにも原田治グッズ、大橋裕之の新刊が登場し、途中で現れるサルは「水中、それは苦しい」のTシャツを着ているという「サブカルまみれ」具合。このドラマを見る層にはたまらなかったのではないだろうか。

サラを演じるのは松本穂香。『ひよっこ』でとりわけ鈍っていた眼鏡っ娘、青天目澄子を演じていた彼女だ。この役に近づけたのかそれとも偶然かはわからないが、サラも眼鏡をかけ、聞いたことのない方言を話し続ける。それでもなぜだかまったく違和感のない松本穂花はすごい。

脚本の柴幸男は「ままごと」主宰。宇宙の一生と人間の一生が重なる『わが星』やある女性の人生を距離と時間でつむぐ「あゆみ」など、壮大で美しい作品が有名だが、横浜での「ゾウノハナクルーズ」など、愉快な作品もじつはつくっている。にしても、このドラマが彼のキャリアでかなり異質の作品であることは確かだろう。

小さな悲劇がおおごとになっていく第7話
第7話「手がビンになった男」は、ちょっとしたきっかけでとんでもない悲劇? が巻き起こる物語。劇団員の井沢(佐藤隆太)は、たまたま芝居を観に来てくれ、「あなたに興味がある」という美人女優(臼田あさみ)と急接近。このまま売れっ子といい夜をすごせるか、というところでたまたまビール瓶の口に突っ込んだ指が抜けなくなってしまう。なんとか指を抜こうとトイレでこっそり瓶を割るも、鋭利な瓶の口は指にとどまったまま。とここまでは本当にくだらない一夜の出来事だが、この指をもっているせいで、彼は思いがけず次々と人を刺してしまう。駆けつけた警官も誤って刺してしまい、ニュースで大々的に報道されるまでに。そこで彼は、報道のカメラに向かって舞台の宣伝という思いがけない行動に出る……。

思えば、冒頭の「(美人女優に)ハマってるわー!」という心の声からして、その後の展開を予想させる。関係ないが、そのシーンでの「折り込みチラシ似合わね~! A4に対して顔小せ~!」という表現が演劇ファンにはたまらない。

シモキタンナイト? エターナルウェポン?
さて、物語は後半、急カーブを描いてSFに突入する。進退きわまった井沢だが、実は誰も怪我させたり殺したりはしていなかった。すべてはシモキタンナイトとして、6次元からの攻撃に立ち向かうため、そのテストだったのだ。井沢のエターナルウェポンは「割れた瓶」。いよいよデーモンズゲートから侵略者がやってくる! ……この急展開には笑わずにはいられなかった。この短いシーンにおいて、それぞれの要素にいちいち名前がついているところがいい。「シモキタンナイト」「エターナルウェポン」「デーモンズゲート」とキーボードを打つだけでたのしい。脚本の上田誠は、劇団ヨーロッパ企画の立ち上げ以降、ずっとコメディを作り続けてきた。過度にドラマに寄ることなく、あくまでも笑いを追求してきた彼の、堂々たる40分間だった。

場の次は"運"が主役、ヒモの奮闘(パチンコで)を描く第8話

SF2連発の後、一転ダメな男のリアリティある「最悪の一日」を描いたのが第8話「彼女が風俗嬢になった男」。同棲中の彼女(馬場ふみか)が風俗で働いていることを知り、やめるように頼むのりお(青柳翔)。すると「あんたが半分稼いでくれたら止められる」と言われる。彼はまごうかたなきヒモなのだ。彼女の月収、100万の半分を稼ぐためにパチンコに直行するところも、その軍資金を結局彼女に借りるところもダメっぷりが際立っている。

いざ行きつけのパチンコ屋に行ってみると、メガネのコーヒーレディ、愛子(森川葵)が周りでコーヒーをこぼしたり、玉の入った箱を落としたりとドジばかりやっている。最初こそ軍資金が減る一方ののりおだが、愛子のドジがひどくなるにつれ、当たるようになる……。いいことも悪いことも総量は一定、という説があるが、パチンコ屋で日々働いていた彼女はそれを熟知し、密かに好きだった彼を勝たせるためにわざとドジをしていたのだった。

パチンコのリーチ画面で感じるカタルシス
端から端までのりおはクズだし、愛子も顔だけでのりおを好きになってるし、のりおに密着していたバラエティ番組のAD(田村健太郎)だけはのりおを助けたけれど、結局それも番組を面白くするためかもしれないし、なんだかみんな、徹底して薄っぺらい。それでも、クラシックの流れるなかでパチンコのリーチが揃う画面に漂うカタルシスは一体なんだろう。

脚本を手がけた根本宗子は20代でありながら本多劇場進出を果たした劇作家。いつまでも小さな劇場での公演を主戦場とし、それをよしとする劇団が多いなかで、彼女は着実に観客を増やし続けている。ダメな人たちのリアルな会話を積み重ね、最後にパッと派手なカタルシスを観客に与えるその手法は、今回のドラマでもしっかり表現されていた。

ちなみに、第7話で下から「お母さんは泣いてるぞ!」とやった警部らしき男は第1話「違法風俗店の男」で店に踏み込んだ大堀こういち。第7話、第8話と連続で登場した警官は第4話「夜逃げする女」の時と同じ六角慎司だ。やはりどうやら毎回さまざまな悲劇が起こるこの「下北沢」は、すべて同じ世界のようだ。
(釣木文恵)

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