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才能があるかどうかは誰にもわからない【いきものがかり山下穂尊の『いつでも心は放牧中』Vol.6】

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それまでろくにライブハウスでやったことのなかった僕らにとって、ワンマンライブはたしかに冒険だった。不安がなかったわけではない。しかし、勝算がないわけでもなかった。

相変わらず地元での活動にこだわっていた、というかそれ以外の選択肢のなかった僕たちが、地元だからこそ出来るライブ。高校時代からの友人やお客さんも待ってくれていた。自分たちなりにそこも踏まえて考えた方法もあった。

まず、ライブハウスを貸し切るには大体12万円くらいかかる。もちろん当時の話だし、都内のライブハウスとなれば金額もぜんぜん違う。だから厚木がホームだった僕らにとっては、そのへんのリーズナブルさも味方となった。

たとえば対バンライブだと金額の設定はライブハウスの慣例みたいなものもあり、だいたい2500円くらいだ。それをノルマとして各バンドが30枚くらいずつ捌く。しかし、大学生や高校生にとって2500円というのはまず無理な話だ。映画でも大学生なら学割で1500円なのに。しかも、僕たちの友達に僕たちを観にきてもらうのに、他のバンドとの対バンのチケットを売るのはどうにも割に合わない。実際の出演時間はせいぜい30分くらいだろうから。そういうこともあって、やるならワンマンしかないと決めた。

ワンマンライブの利点は、チケット代をライブハウス側と協議しながら自分たちで決められることだ。僕たちは、ワンマンのチケット代を1200円にした。そうすると、ライブハウスを借りるのに12万円だから、100枚売れば損はしない、ということになる。

さらに友達にチケットを買ってもらう時に、1000円でいいよと言って、ディスカウントして売っていた。そうすると、人間心理としては「安い」と思ってくれるし、ライブの日の予定がどうなるかわからなくても、1000円ならキリのいい金額だし、まあいいかと思ってくれる。

そして、ワンマンライブをやると決めてから、路上ライブを完全にワンマンのためのプロモーションというふうに位置付けた。それまでは路上でやること自体が目的だったのだが、その先にワンマンがあると思うと多少意識が変わった。よりわかりやすく、よりダイレクトに歌を届ける思いみたいなものが強くなっていった。路上ライブではチケットを800円で売った。路上で僕らを見てくれた人は、友達ではないから、よりハードルを下げるために大胆なディスカウントをしたのだ。

そうやって、実際のチケット代よりも安くしながら売ったわけだが、そこにも考えがあった。

仮に友達(1000円)と路上(800円)で半々が売れたとして、1枚の単価は900円になる。それを300枚売ったら、合計金額は27万円。ということは、そこから会場使用料の12万円を差し引いても全然ペイできるのだ。半分しか売れなかったとしても大丈夫という計算だった。まあ、ざっくりとはしているのだが。

実際、チケットは300枚ソールドアウトになった。その利益でスタジオ代を払って猛練習したり、次のワンマンライブの経費にまわしたりして、3ヶ月に1回くらいのペースでワンマンライブを行った。

1回目のワンマンがソールドアウトしたという結果は、僕らの予想以上に大きなインパクトだったようだ。

ライブハウスの店長さんは盛り上がってCDを一緒に作ろうと言ってくれた。そしてレコーディングをして、二度目のワンマンの会場でCDを売ったりした。さらにライブが終わってからも地元を中心に噂は広まり、僕らの初めてのCDが地元のCDショップに並んだりした。

実は初ワンマンの会場に、僕らの初代マネージャーとなる方がいた。彼女の担当していたバンドが厚木とかその辺りの出身で、ライブハウスの店長の元を訪れた際、僕らのワンマンライブの告知ポスターを見かけて興味を持ったのだそうだ。そのライブハウスは、ビジュアル系やメタル系のバンドが多く出演するところで、そういうバンドのポスターに混じって、3人で笑いながらピースとかしている僕らが妙に気になったのだという。それで店長に「この子たちは?」と話を聞いたら、実はもうその時でチケットが300枚近く売れていて、間もなくソールドアウトするんです、って聞かされてびっくりしたのだと。

僕らの大学2年の1年間は、ワンマンライブに明け暮れることで過ぎていった。そして3年生になって今の所属事務所と契約した。厚木市文化会館の中ホールでライブをやったり、地元のFM局で曲をかけてもらったり……浪人生の時に、公民館の廊下のベンチで良樹と語り合っていたような話が、少しずつ形になっていくようで、わくわくした。

「夢が叶ってよかったですね」というような言葉を投げかけられることがたまにある。ありがたいと思う。でも他のメンバー二人がどう思っているのか分からないが、正直ピンとこない。「いきものがかり」が、「音楽」が、「夢」だと思ったことがない。こんな言い方をすると反感を買ってしまうかもしれないが実際そうなのだ。いずれはちゃんといわゆる「プロ」になって三人で飯を食えるようになる、という「目標」ではあった。大きな目標。そこに行き着くために目の前の小さな目標を達成するにはどうしたらいいのか、その試行錯誤の連続の先に今の僕らがあっただけ。だから当時は三人とも路上ライブを、ワンマンライブを、本当に本気の「就職活動」だと思っていた。そして大学卒業の一週間くらい前にその就職活動は実った。様々な運命と運、そしてちょっとした自分たちなりの工夫の中で。

才能なんてあるかどうか、結果が出るまでは誰にもわからない。結果が出なくても才能がある人の方が多分多い。でもそれをただ待つよりも、結果を掴むために考えられることはすべて考えてやってみることのほうが大事だ。僕たちの経験から言えるのは、そういうことだ。

https://news.walkerplus.com/article/121572/

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