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ディオール新CMがさすが。“酒とクスリ中毒”だったSiaの名曲を使った意味は?

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2017年9月から放送されているクリスチャン・ディオールの香水ブランド「ミス・ディオール」の新CMが、またしても素晴らしい仕上がりです。特に女優のナタリー・ポートマンが橋の上から海へダイブしたり、ピンクのオープンカーで砂浜に「love」とつづったりするシーンが印象に残りました。

◆顔を出さないSia、酒やドラッグ依存で苦しんだ過去

そして今回も絶妙な選曲なのです。その曲は、オーストラリア出身の女性シンガーソングライター、Sia(シーア)が2014年に放った大ヒット「Chandelier」(シャンデリア)。

土屋太鳳が「Alive」という曲の日本版MVで踊っていたので、Siaの名前ぐらいは知っている人もいるでしょうか。

Siaは現在41才で、売れるまで時間のかかった遅咲きの人。しかも極度の人見知りで、最近セサミストリートで顔を明かすまでは目元がすっぽり隠れるほどのカツラをかぶって活動していました。なんとテレビの生番組で姿を見せないまま歌ったこともあるんだそうです。

さて、誰もが知っている曲を新商品とタイアップさせるなんて当たり前じゃないの? と思われるかもしれませんが、そこはディオール。映像と音楽の組み合わせに確かな意味が込められている点は見逃せません。ただやみくもにモノを売るだけでブランドイメージは築けないってことですよね。

◆愛も美も、犠牲なくしては手に入らない

そこで今回のテーマ「AND YOU, WHAT WOULD YOU DO FOR LOVE?」(で、あなたは愛のために何をするの?)を踏まえて、海へのダイブやドレス姿のまま裸足で砂浜を駆け抜ける映像を見ると、“愛を得るためには何かを犠牲にしなければならない”というメッセージが浮かび上がってきます。つまり、物事のビターな面にクローズアップしているのですね。

“ぜいたくや美しいものは誰にでも簡単に手に入るわけではないよ”と、消費者に高いハードルを設定しているようで面白い。

こうしたコンセプトに、Siaの「Chandelier」はハマっているわけです。

(「Chandelier」のMVで踊っている少女は、当時11際のダンサー、マディ・ジーグラー)

まず歌詞から見ていきましょう。かつてSia自身が苦しんでいたアルコール、ドラッグ中毒の経験をもとに書かれています。毎晩キメてから繰り出すパーティーは、確かに楽しい。まるで明日などないかのように今日その日を燃焼しつくして生きる。<シャンデリアにぶら下がってやる>というサビのフレーズに集約されています。

けれども、乱痴気騒ぎの最中にも歌詞の主人公は泣いている。楽しいはずなのに、そんな自分がイヤで仕方ない。だからシャンデリアの上で揺れる姿を想像して、<鳥になって空を飛べたら 涙も乾くでしょ>と考えてみる。

この切なくていたたまれないユーモアこそが、「Chandelier」の核になっているのですね。

◆ディオールならではの苦く気高いポリシー

しかしこれだけで「Chandelier」は成り立ちません。こうした相反する気持ちに引き裂かれそうになりながらも、壮大なハーモニーやメロディラインが抵抗している。そして、悲しみの底で最も力強くなるSiaの絶唱。

言葉と音楽が反発しあうことで二面性が生まれると、楽曲はどんどん研ぎ澄まされていきます。「Chandelier」が、ただのヒット曲を超えて偉大な名曲である理由です。

これが、ナタリー・ポートマンの見せる複雑であいまいな表情に見事にマッチしている。ピンクのオープンカーで「love」と書く楽しさにも、どこか祭りが終わったさびしさがついてまわる。エレガントであるためには厳しい断念と拒絶を受け入れなければならないという、ラグジュアリーブランドならではのポリシーがうかがえます。

香水の華やかさをアピールするのに、心身ともにすり減った依存症の曲を使うなんて、ふつうなら思いつかないですよね。でも、ディオールは平気でやってしまう。苦味を無視することは、美しさに対する冒とくだと考えているからなのでしょう。だからディオールのCMは圧倒的なのです。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>


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