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「叱られてもどこかうれしい」 92歳・現役料理研究家の言葉が腹落ちするワケ

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 「人生80年」時代に入り、人はいったい何歳まで現役でいるのか。「人手不足」や将来の「年金受給」の問題で、老人になってもなかなか引退させてもらえないというのが、今の日本の現状かもしれません。

92歳の現役料理研究家、桧山タミさん。料理教室を開いてから60年近くが経ちます。「人生100年」を実践していますが、著作『いのち愛しむ、人生キッチン』の中には、"台所好きの食いしんぼう"を自認する先生が、台所で見つけた"幸福術"が散りばめられています。

西欧料理の講師としてそのキャリアは始まりましたが、46歳の時に伝統的な「日本の家庭料理」の指導へと方向変換。まわりの料理関係者が相次いで病に倒れたり、世界各地へ食の旅に出かけて「自分の生きる土地に合ったものを食べる」大切さを知ったりしたことがきっかけでした。生徒は激減したそうですが、信念をもって「健やかなからだをつくるための家庭料理こそ自分が心から伝えたい料理の道」と決意したのです。

タミ先生の料理教室は生徒から「人生塾」とひそかに名づけられているそう。20代から70代までの生徒がおり、40年50年と教室に通いつづける人も。「ときどき、背を向けているタミ先生から『あら、まな板の音がヘン。切り方が違うよ』と声が飛んできます(笑)。手順通りにしていても、心ここにあらずで包丁を握っていると、『あなた、今日は料理をしていない』とぴしゃりと正され、背筋がしゃんとします」とのこと。そして「叱られたのにどこかうれしいのは、タミ先生の言葉に温かな『ほんとう』があるから」だといいます。料理の技術だけではない先生の考え方、生き方そのものを学びたいと毎日のように、塾生が集まってくるのです。

本書にはそんな先生の人生訓、養生訓が満載。「家庭料理は『買えない味』」という項には、「外食やお惣菜が続くと、栄養は足りていても、胃に疲れがたまり、それが心の欲求不満にもなりますよ」と言います。でも、日々ごちそうを作る必要はないとも。日常の食事は、「さっとつくれるごはん」でよく、「『そんなにごちそうばっかりつくらんでもよかよ』とわたしはいつも生徒さんたちに言ってます」とのこと。そして「主食のごはんと汁もの、それに旬のおかずが1皿か2皿あればいいじゃない」と。やはり、時代は一汁一菜なのかもしれません。この本を読むと、先生から直接話しかけられ、自分も塾生の一員になったような気持ちになります。

あとがきには、女性はもともと強く、男性はもともとやさしい。だから「やさしさを学ぶために女性は生まれてきた」という言葉も。おいしそうなレシピの数々や「キッチンの人生相談室」もおすすめ。生涯現役っていいなと感じる一冊です。

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