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きのこ帝国の「猫とアレルギー」が、どうしても猫目線のラブソングに見えてしまう

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そして、このアルバムの表題曲「猫とアレルギー」は、思わず胸がキュッとせつなくなってしまうような、ある一組の男女の別れの曲だ。

きのこ帝国 猫とアレルギー



猫と暮らす彼女。そして、アレルギーなのにその猫を可愛がってくれていた、元彼氏。会えなくなってしまった今、猫を見るたび彼女は”彼”のことを思い出す…。
ストーリーは、本当にざっくり言うとこんな感じ。

冒頭の歌詞にも、会いたいけれど、もう会えない。忘れたいのに、どうしても頭から離れない…。そんな、失恋の後のかなしい葛藤がにじみ出ている。

でも、ちょっと見方を変えてみてほしいのだ。猫好きの人は気づいているかもしれないけど、この曲、視点を変えるとまったくちがう物語のようになる。
彼女ではなく、元彼氏目線で見てみる? …いや、違う。
「猫とアレルギー」の歌詞を深読みしてみると、この曲の歌詞には恋人を失った女性だけじゃなく、”彼”と会えなくなった猫の淋しさも込められているように思えてくる。つまり「猫目線」の曲にもとれる、ということ。

街角で出会った猫からインスピレーション


作詞した佐藤さん本人が、過去のインタビューで「街角で出会った猫からインスピレーションを得てつくった」「一人の人に向けて書いた曲」と語っているから、本を正せば人間同士の歌なのは間違いない。
でも、元彼氏”に会えなくなった猫の心の中にも、きっと漂っている喪失感。それを歌詞に重ねながら聴くと、切なさの種類が少し変わってくるような気がするのだ。

まず、曲の中にくり返し登場する「話せなくていい」に注目してみる。このフレーズって、しゃべれない分、瞳で訴えかけてくる猫の姿を連想させる。
「夢に出る」という部分も、よく眠るのは猫ならでは。それに、やわらかいメロディーは人間というより、幸せそうに眠る猫の夢の中を思わせる。

…とすると、「アレルギーでも あなたは優しく撫でた」は、“猫を撫でた”のではなくて、猫目線で見て“私を撫でてくれた”? ということだってあり得る。

そして「なにもない空、滲んで消えてく」というシチュエーション。

猫って昼間、よく窓際やカーテンの裏に座って、じーっと空を見つめていることがある。そういう時って、もしかしたら彼らは、今は会えない懐かしい人の姿をぼんやり思い浮かべているのかもしれない。
「あなたの目と手の温もり」どんなだったっけな~、なんて。
(まあ、実際は外で動く鳥や木などを見ているわけですが)

また、この曲の中には「ふとした瞬間アルバム開いて」など、ほぼ室内をイメージさせる描写しか出てこない。もしこれが人間の男女の話だったら、外でデートもしていただろうし、もっと”二人で行ったあの場所”とか”一緒に見た景色”とか出てきてもいいはずなのに。
その室内にいる感じが、”猫と彼の言葉のない対話”のイメージをますます加速させる。

「何度でも思い出して歌うわ」というフレーズもそうだ。佐藤さんならまだしも、普通の女性は果たして普段から歌をうたうだろうか?
”歌=猫の鳴き声”と考えると、これまたしっくりくる気がする。

猫は、家によく来ていた“彼”が訪ねてこなくなった理由が、きっとよくわからない。最近見ないなぁとぼんやり考えていたら、そのまま思い出になっていく…。
そんな時、猫は彼”の姿を回想して、鳴いているのかもしれない。

人間なら、誰かと別れても、好きな時に外へ出て新しい出会いを探しにいけるだろう。でも、猫は家で待っているしかない。過ぎた日をぼんやり思い浮かべながら。夢の中で、時々はその人のことを思い出しながら。
それは淋しいことなのか、いっそ幸せなことなのか、人間である私にはわからないけれど。

どうしようもない例え話



でも、他の人に話すのは恥ずかしい「どうしようもない例え話」。それを”彼”がこっそり猫にだけ話していたら?
猫はその秘密の関係を思い出して、飼い主よりもちょっと優越感に浸ったりするのかな。
(猫は気まぐれだけれど嫉妬深いイメージもあるから、「他の誰にもしないでいて」なんて本当に思っていそうだし)
その密やかな空気を想像すると、可愛くて少し情けなくて、また胸がギュッとなる。



すべては、想像に過ぎない。
でもこの曲が、話のできない猫から”彼”への、懐かしい気持ちをこめたラブレターだったなら…。永遠に伝わることがない分、人間同士より、どこかせつなくてロマンチックだ。

猫好きの人、いかがでしょうか。

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