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パーヴォ・ヤルヴィとN響のシュトラウス パッケージとしての圧倒的存在感(Album Review)

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いま世界で最も注目すべき指揮者とオケのコンビのひとつがパーヴォ・ヤルヴィとNHK交響楽団であることは論をまたない。好評を博しているリヒャルト・シュトラウス・チクルスの第3弾は、ニーチェの書名とゲーテの概念という哲学的テーマを共通項にもつ『ツァラトゥストラはかく語りき』と『メタモルフォーゼン』のカップリングで、2016年2月、サントリーホールでのライブ録音である。

一聴してなにより驚かされるのは、シュトラウスのスコアを透かし見るような、N響のアンサンブルの精度の高さだ。そして各パートが鮮やかに分離してエッジの効いた音像は、楽団員のキリキリするような緊迫感も感じさせ、パーヴォと指揮者の間に生まれた、ひりつくような濃密な関係性を強く印象づける。

弦でいえば「23の独奏弦楽器のための習作」という副題のついた、崩れゆくドイツへの甘美なる哀歌とも言うべき『メタモルフォーゼン』(ここではカラヤンに倣い、一部ダブルソリストでの演奏)は、全曲これ、稠密なアンサンブルを見せつける快演だし、「舞踏の歌」など弦楽パートの面目躍如だ。

だが際立つのはなにも弦だけに限らない。『ツァラ』で、他のシュトラウス作品同様に高いハードルを課された金管は一歩も引かない構えだし、「学問について」でモチーフを浮き上がらせて絡みつき「舞踏の歌」を彩る木管楽器も十二分に存在感を示している。数え上げれば極まりないが、つまりはどのパートも、パーヴォの要請に全力で応えようとしている。

細部をよく照らし出した、綿密にして細心な解釈は勢いに任せて爆発しないが、情熱に燃えて十分な迫力を備えており、『メタモルフォーゼン』中間部アジタートでの推進力は躍動感に満ちている。内奥に沈潜する切々とした寂寥感は「墓場の歌」でも胸に迫る。「学問について」のフーガや、位法的洗練の粋を極めた『メタモルフォーゼン』では、窮極の職人芸とすらいえる音楽を鮮やかに炙り出す。かくして各々の声部が幾重にも絡み合いながら、響きの総体として音楽の波動を生み出している。

パーヴォがN響とともにシュトラウスと切り結んで実現した演奏そのものも素晴らしいが、フォローアップも万全だ。最新テクノロジーによる立体感あるサウンドは、SACDの2チャンネルや5.1チャンネルはもちろん、通常CDのレイヤーでも存分に堪能できる。次々に現れるモチーフや、『メタモルフォーゼン』なら『ツァラ』含む自作や多作からの引用豊富な展開を、スコアではどこ、この演奏では何分何秒から、と懇切丁寧に示してくれるライナーノーツは、解像度高く情報量の多い演奏の聴き所を的確に示してくれる。

パッケージディスクの凋落がささやかれるいま、演奏・録音・解説の三位一体がこれほどまでに高い次元で昇華したディスクを前にすると、まだまだレコーディングという営為には、かつてとは異なる方向性であろうとも、新たなる可能性が未来に向けて開かれている、そう強く思わせてくれる。必聴にして必携のアルバムである。Text:川田朔也

◎リリース情報
『R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき メタモルフォーゼン』
SICC-10219
3,240円(tax in.)


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