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野田秀樹×中村屋の桜が舞い、染五郎×猿之助のYJKTが帰ってくる!『八月納涼歌舞伎』稽古&会見レポート

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2017年8月9日、東京・歌舞伎座で 『八月納涼歌舞伎』が始まった。開幕前日には本番さながらの稽古の模様が公開され、その合間に行なわれた会見には、中村扇雀、市川染五郎、坂東彌十郎、市川猿之助、中村勘九郎、市川中車が登壇した。キャストと並び話題となっているのが、坂東玉三郎、市川猿之助、野田秀樹による演出だ。その豪華さへの注目度を裏付けるかのように、この日、歌舞伎座のプレス席には、密着取材のカメラが数社同時に居合わせるという状況。三部制となる『八月納涼歌舞伎』の演目と、前日に稽古が公開された演目(※)は下記のとおり。

第一部:「刺青奇偶(いれずみちょうはん)※」「玉兎」「団子売」
第二部:「修禅寺物語」「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)※」
第三部:「野田版 桜の森の満開の下※」

「ああ、素敵だったな」と思っていただける作品に


まずは会見より出演者のコメントを紹介する。最初に見どころを語ったのは、扇雀。 第三部『野田版 桜の森の満開の下』で、《ヒダの王》役を務める。扇雀にとっては、1月に上演されたNODA・MAPの舞台『足跡姫』に続く、今年2度目の野田作品だ。

「納涼歌舞伎は大変豪華な顔ぶれに、演目も盛りだくさんで、歌舞伎が初めての方にも楽しんでいただける内容です。私は第三部『野田歌舞伎』第4弾に出演しますが、勘三郎のお兄さんと野田さんがはじめられた『野田歌舞伎』を(勘三郎が逝去した)今も引きつづいて上演できることを嬉しく思います。野田さんの作品には難解な部分もあり、ご覧になった方全員がそれぞれに違う感想を持つような楽しさがある。しかし観終わった後にどの方にも『ああ、素敵だったな』と思っていただけるような作品に仕上がっています」



第二部『修禅寺物語』は、《夜叉王》 を演じる彌十郎の、父(坂東好太郎)と兄(吉弥)の追善狂言だ。その感謝を述べた上で次のようにコメントをした。

「納涼歌舞伎は毎年舞台もお客様も熱い、大変良い舞台となっております。勘三郎さん、三津五郎さんが中心になって復活させた納涼歌舞伎は、花形俳優が中心の舞台であり『八月は若手の月』と言われておりました。私もまだまだ若手のつもりで挑戦してまいります。熱い熱い、夏の暑さだけでなく、熱く盛り上がる公演になるようがんばります」

かつて勘三郎と野田が開催したワークショップをふり返り「WSの題材に、野田さんが持ってきたのが『桜の森』。勘三郎さんが持ってきたのが『研辰』でした。台詞のひとつひとつに意味があり、韻を踏んだり、勉強になることばかりです。そして今も(ふたたび野田の演出を受け)大変勉強させていただいています」と語った。

最初で最後!? 2通りの結末


染五郎は、「第一部では玉三郎のお兄さん、第二部では猿之助さん、第三部では野田さんの演出を受けることができる。こんなに贅沢なものをいっぺんに味わえるというのは本当に、…へとへとです(笑)」と一同の笑いを誘いつつ、「興奮で楽しみながら務めております。ぜひぜひ歌舞伎座にお越しください」とアピール。

猿之助は第一部『団子売』、第二部『修禅寺物語』の《桂》と、『歌舞伎座捕物帖』の《喜多八》を務める。《弥次郎兵衛》役の染五郎が、来年「十代目松本幸四郎」襲名を控えていることから「猿之助・染五郎のコンビで芝居できるのはこれが最後。淋しさと同時に、最後がこの作品で良かったという思いがあります。(弥次喜多の)物語の最後は、ふたりが宙乗りで飛んでいく。これを思い出に、染五郎さんとバイバイできるのは嬉しいことです。染五郎・猿之助コンビを存分に楽しみたい」と語った。

そのコンビに会える『歌舞伎座捕物帖』では、物語の結末が2通り用意されているという。

「オーディエンスの皆さんによって、結果が変わってくるという趣向です。やってみたら意外と大変で、…もう二度とやらない。こんがらがってくるんですよ」とぶっきらぼうに言い放ちながらも、イタズラっぽく笑った。

『八月納涼歌舞伎』左から中村勘九郎、市川猿之助、市川染五郎、中村扇雀。
『八月納涼歌舞伎』左から中村勘九郎、市川猿之助、市川染五郎、中村扇雀。

勘九郎は『団子売』『歌舞伎座捕物帖』、そして『野田版 桜の森の満開の下』では《耳男》を演じる。「一部から三部まで半端ない熱量の舞台になると思いますが、全体を通して、美しいテーマの作品が揃っています。それも楽しんでいただければ嬉しいです」とコメント。

初めて『納涼歌舞伎』に出演する中車は、昨年末に共演した七之助と「ぜひ来年の納涼で『刺青奇偶』をやろうね」と話していたことを明かし「初日を明日に控え身が引き締まる思いです。全力で務めさせていただきます」と意気込みを語った。

『刺青奇偶』では、勘三郎が演じた《半太郎》を務めることから、記者より勘三郎の印象を訊ねられると「本当に大きな、大きな大きな存在という印象。『刺青奇偶』では、そのご子息であられる七之助さんの息を感じながら演じさせていただけます。それだけでも、遠くに勘三郎お兄様を感じることができ、僕なりに思い入れのある八月になる」と答え、深く頷いた。

次世代発掘のチャンス!


第一部『玉兎』には、勘九郎の息子・勘太郎が登場する。勘九郎は「心配です心配です。その後の(自分の)『団子売』も心配であるんですが」と笑いつつも、「のびのび大きく踊ってくれたらいいかなと思う。公演期間中にも成長していってほしい」と期待を込める。

第二部では、昨年に続き染五郎の長男・金太郎と、中車の長男・團子が共演。成長の度合いを問われた染五郎は「1年で頭ひとつ大きくなりました。足のサイズもほとんど同じ。息子の方がかっこいい靴を持っているので、そろそろ借りることができるかな」と笑いを誘う。中車が「うちは、もう息子の方が(靴が)5ミリ大きくなりました」と続くと、「じゃあもう(靴)借りられないね」と染五郎が言葉を重ね、一同は再び笑いに包まれた。役者としてではなく、サイズ感で子どもの成長を語る2人に和まされる一幕だった。

次世代を担う子供たちについては、猿之助も「彼らがいないと将来の歌舞伎界はありません。大事な宝」とコメントするも、「では大事に優しく…」と言いかけた記者に「それはしません、ビシビシと!」ときっぱり。最後は扇雀が、「二部には花形の役者さんたちがぞろぞろ出てきます。お客様には、次のひいき役者を発掘していただくのにいい機会」と扇雀がアピールし締めくくった。

※以下、一部演出のネタバレを含みます。
『八月納涼歌舞伎』左から中村勘九郎、市川猿之助、市川染五郎、中村扇雀、坂東彌十郎、市川中車。
『八月納涼歌舞伎』左から中村勘九郎、市川猿之助、市川染五郎、中村扇雀、坂東彌十郎、市川中車。

まるでファン感謝祭の華やかな顔ぶれ


場内に入ると、舞台では『歌舞伎座捕物帖』の(通し稽古の前の)立ち稽古が行われていた。台詞の刻み方や照明の間合いを、テンポよくディレクションする猿之助の声が小気味よい。スッポンから出てきた○〇がなぜか上半身裸だったり、門之助&笑三郎が唄で場を盛り上げ最高潮!というところで、動きの確認がはじまり芝居がストップ。その間も唄いつづける2人が「これいつまで唄うの?」と戸惑うような仕草をみせたりと、俳優陣も笑いをこらえながらの稽古だった。

本作は、昨年の納涼歌舞伎で好評を博し、猿之助と染五郎によるラップ動画『YJKT』も話題となった『東海道中膝栗毛』の続編であり、物語の舞台は、ここ歌舞伎座。『義経千本桜』の公演前日に事件が起こるという物語だ。前作からの流れも超現代的な手法でおさらいしてくれる。

その後始まった通し稽古では、さすがに本番さながらの緊張感、……かと思いきや、そうそうに勘九郎と染五郎がプレス席に向かってアドリブ。観る側はもちろん、演じる俳優たちものびのびと楽しそうで、それがまた観る側の気持ちを盛り上げてくれる。

隼人の役名が≪綾人≫、巳之助が≪伊之助≫、笑也が≪お笑≫ときて、中車は≪釜桐左衛門≫!即座に「カマキリ左衛門!」と読まれるファンの方もいらっしゃるかもしれないが、これあくまで≪釜(姓)・桐左衛門(名)≫。ネーミングにさえ猿之助の遊び心がつまっている。

電飾を使った(いい意味で)悪趣味なド派手なセット、観客に物語のラストを選択させる趣向、≪狐忠信≫の欄間抜けの仕掛けをみせてくれる演出などなど、始めから終わりまでサービス精神と工夫に溢れ、歌舞伎が好きな方にも、歌舞伎デビューの方にも、温度差なく盛り上がれる一作だ。めいっぱい笑いながらも、歌舞伎役者たちが伝統芸能の継承者であると同時に一流のエンタテイナーであることを改めて確認する機会となった。


涙のサイコロ、渾身のイカサマ


サイコロ博打の「半(奇数)か、丁か(偶数)か」に由来し、『刺青奇偶』は「いれずみちょうはん」と読む。かつて勘三郎が演じた博打好きの≪半太郎≫を中車が、玉三郎が演じた≪お仲≫を七之助が、片岡仁左衛門が演じた≪政五郎親分≫を染五郎が演じる。世代をかえ、演出の立場から玉三郎がそれを見守る作品だ。

半太郎は、決して悪人ではないけれど博打好きが過ぎて江戸を追われた男。ひょんなことから≪お仲≫と夫婦になる。

七之助の≪お仲≫のツンからデレへの移り変わりが、極端であるけれど描かれ方は丁寧。それゆえ不自然ではなく、心を動かされる。≪半太郎≫も情愛たっぷりの演じられ、刺青をいれるシーン、最後の大ばくちのシーンは、関係者席のあちこちから鼻をすする音が聞こえた。


伝説の野田作品がついに歌舞伎に


通称『野田歌舞伎』は、野田秀樹と中村勘三郎がタッグを組んで上演してきた新作歌舞伎のシリーズだ。本作は、勘三郎の亡き後初めての『野田歌舞伎』となる。野田が劇団「夢の遊眠社」時代に発表した伝説の戯曲『贋作(にせさく)・桜の森の満開の下』を歌舞伎化するにあたり、台詞の一部は七五調に書き換えられたという。

たとえば「桜の花が咲くんだ!」という≪耳男≫の台詞。これが「桜の花が咲くんだい!」になっただけでも、≪耳男≫が勘九郎になっていく。他にも、オリジナルでは「冷汗は、幸せが落とし穴にはまった時に流れるの」だった≪夜長姫≫のセリフも、七五調でがらりと変わり、恐ろしいほどぴたりと七之助にはまっていた。この≪夜長姫≫は美しさと残忍さを、表裏ではなく同時に放つキャラクターで、思えば女形のためにあるような役どころ。

中村勘三郎の≪耳男≫を観たかった。そんな思いが消えない方もまだ多いかもしれない。しかし、稽古(一幕のみ)を観ただけにも関わらず、今や≪耳男≫は勘九郎のために、≪夜長姫≫は七之助のために創られた役だとさえ思えてくる。そんな舞台を創り出す野田秀樹は、やはり稀代の演出家だ。舞台美術は、2001年の舞台『贋作・桜の森の満開の下』(主演・堤真一、深津絵里)にも参加した堀尾幸男によるもの。幻想的な世界観に浸ってほしい。


そして、ここまでの全ての作品に出演しているのが染五郎だ。第一部の品よく懐深い≪政五郎≫、第二部のふわふわとご機嫌な≪弥次郎兵衛≫、第三部では、壁ドンも披露するチャラさと、その下に別の顔を潜ませる≪オオアマ≫。会見で「へとへと」とコメントするのも納得の活躍ぶりだ。特に第三部は、第一幕のみの公開稽古だったため≪オオアマ≫が本領を発揮する後半が恐ろしくも楽しみでならない。

盛りだくさんの平成二十九年の『八月納涼歌舞伎』は、8月9日より27日までの公演だ。

取材・文=塚田史香

公演情報
『八月納涼歌舞伎』

■日時:2017年8月9日(水)より27日(日) 3部制
■会場:歌舞伎座
■演目
第一部 『刺青奇偶』 『玉兎』
『団子売』
第二部 『修禅寺物語』 東海道中膝栗毛『歌舞伎座捕物帖』
第三部 『野田版 桜の森の満開の下』 ■公式サイト:http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/534​

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