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ホスト達に「嵌められた女」|12星座連載小説#136~射手座 10話~

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12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

文・脇田尚揮

【12星座 女たちの人生】第136話 ~射手座-10話~


ヴーヴ・クリコが運ばれてくる。

銀色のワインクーラーの中に黒いボトルが鎮座するその様は、いかにも“ホストクラブに来ました”という体だ。

「じゃあ、乾杯しましょう」

マサシが満面の笑みで耳元に囁く。

微かに香るいい香り……。これは“ブルガリ・ブラック”ね……。

シャンパングラスを傾けて、アルコールが私の体内に入っていく。この小悪魔のような男の世界に一歩一歩足を踏み入れていることに気づきながらも、理性がどんどん言うことを聞かなくなる。

「結構、お強いんですね」

『そんなことないけど……飲めない方じゃないわ』

「へぇ、すごい! 淳子さん、飲むのはいつもシャンパンなんですか?」

『う~ん、そうね……』

国外で仕事をすることもあってか、ビジネスの席では大抵ワインかシャンパンを飲んでいる。たまにビールもあるけど、個人的にはそんなに好きじゃない。

「そっかぁ……じゃあさ、ちょっと“冒険”してみませんか、淳子さん?」

『え……?』

「ブランデーとか、飲んでみましょうよ」

流石に、「これはヤバイ」と私の中で警報が鳴る。ブランデーなんて、そうそう飲まないし、何よりホストクラブで飲むと金額が跳ね上がる。ここは見栄を張るところじゃないわ。

そう思って、断ろうとしたその時―――

「マサシ……お前、“俺の”淳子ちゃんに何やってんだよ」

純が戻ってきた。

「何って、普通に飲んでるだけだよ」

ややこしい展開……でも、何だか悪くない。

「お前、クリコまで入れさせて、今度はブランデーかよ! ヘルプの癖に、ちょっと図々しいんじゃないか?」

「僕はただ、淳子さんと楽しく飲んでいただけじゃないか。そんなこと純に言われる筋合い無いな」

二人のイケメンが、私をめぐって争い合っている……、なんだろう、この優越感。

しかも、ここのクラブのナンバー同士。まず、こんな状況になるなんてことはないわ。

『ちょっと待って、二人とも!』

二人が同時に私を見る。私の中の何かに火が付いた。

『この前、仲良く飲んだ間柄じゃない……今夜は私が二人にご馳走するから、ケンカなんてやめてよ……』

つい、言ってしまった。

「ゴメン、淳子ちゃん……せっかく来てくれたのに……」

「淳子さん、すみません……」

二人とも急にしおらしくなる。そうそう、それでいいの。

「じゃあ、ブランデーで乾杯と行こうか、マサシ」

「そうだね……淳子さん、VSOPあたりが飲みやすいと思うんだけど、どうかな?」

VSOPか……値段的には手頃よね……?

「そうそう淳子ちゃん、1本入れるよりも“飲み放題”コースにした方が、安く済むよ」

『え……そうなの?』

「うん、その方がコース制だから、それ以降何杯頼んでも料金変わんないんだよ」

そっか。それなら安心だわ……。

流石にこう何本も入れられたら、たまったもんじゃないしね。コース料金も2万円なら、まぁ妥当なところか。

『じゃ、飲み放題コースで!』

その時、マサシと純がニヤリとしたような気がした。でも、私の意識はもう、ショートしかけていた―――

マサシと純のどちらかが隣にいる状態で、次々とヘルプが入れ替わりブランデーを飲んでいく。

飲み放題だから安心だわ……。

フワフワした意識の中、スマホの音に気が付く。

“クリス”からだ……!

『ハイ、クリス…どうしたのぉ?』

「Jun、今どこにいるんだい?」

『あは、あたし?……今ね、歌舞伎町で飲んでんの』

「ummm……大丈夫かい、迎えにいこうか?」

『あ、助かる~お願い~住所はね……』

マッチに書かれてあるクラブの住所を読み上げる。

「分かったよ……じゃあ、あと30分後に」

そう言って、クリスは電話を切った。ああ……こういう時、クリスがいてくれると助かるなあぁ……。

どのくらい飲んだだろうか。スマホで時間を確認すると、もう2時を回っていた。

「淳子ちゃん、大丈夫?」

『うん、“らいじょうぶ~”』

上手く、言えてない。それが自分でも面白くてケタケタ笑う。

「じゃあ、そろそろお会計しようか?」

『うん、よろしく~』

何だかんだで楽しかった。仕事も上手くいったし、イケメンに囲まれて飲んだし。ちょっと贅沢しちゃったけど、これでまた頑張れる。

来週は、イタリアでまたジュエリーを仕入れてこよう……。

そんな夢見心地で、シャンデリアの光をボーッと眺めていると……、この間六本木で出会った“ガングロ男”がテーブルに歩いてきた。

「どうも、今夜はわざわざお越しいただき、ありがとうございます」

言葉遣いが、やけに恭しい。

『こちらこそ、先日はどうもぉ』

「こちら、本日のお会計になります」

差し出された革張りの伝票ホルダーを開ける。

―――絶句した。

酔いが一気に覚める。

そこに書かれていたのは

112万8640円

という文字。

『あっあの……え~と……』

「すいません、こちら料金の説明がまだでしたね……テーブルチャージに、シャンパンのボトル2本、純、マサシの指名料、そして飲み放題が12人分、それにTaxが40%……」

何を言っているのか分からない。飲み放題12人分……って……?

私の顔色を察したのか、ガングロ男が

「ああ、飲み放題はヘルプにも適応されるんですよ」

と一言。

私……財布の中身で、払いきれない……!

自分の浅はかさを痛感した―――

【今回の主役】戸部淳子 射手座28歳 ジュエリー卸業ヨーロッパ圏でのホームステイなど、学生の頃から海外経験が豊富で、英語がそこそこ堪能。国外から宝石を買い付けて、ブティックやウェデイング業界に卸している。若さの割に目利きであると評されるところも。イタリア人の彼氏・クリスがいるが、性に奔放で何かとトラブルが起こりやすい。
(C) donfiore / Shutterstock(C) Svitlana Sokolova / Shutterstock

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