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景気拡大が続いて人不足なのに、なぜ賃金や物価上昇は緩やかなのか

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■景気拡大の長さがバブル期を超え人手不足に
石原経済財政相は7月21日の閣議で提出した2017年度の年次経済財政報告(経済財政白書)の中で、現在の景気回復基調が戦後3番目の長さに達したとしています。現在の景気拡大局面は、2012年12月から始まって今年7月までで4年8カ月となり、あの「バブル景気」を超え戦後3番目の長さになっています。
また、今回の景気回復では、働き手の生産年齢人口(15~64歳)が年平均で1.2%ずつ減る中、完全失業率が今年2月、22年2カ月ぶりに3%を下回り、有効求人倍率も1.48倍でバブル期の最高値(1.46倍)を上回りました。新卒の就職も、数年前まで就職氷河期と言われたのがウソのようで、二股三股の内定は当たり前の売り手市場になっています。

■一方で、賃金は上昇せず
一方で、人手は足りないのに賃金の伸びは緩やかです。名目の賃金は、バブル期は年平均で3.6%増えていたのに対し、今回は0.4%の伸びにとどまっています。その主な理由は次の4つと考えます。
1つめは、非正規雇用の比率の上昇です。非正規雇用の賃金の水準は正規に比べ大幅に低いため、その構成比が高まると平均賃金は下がってしまうのです。
2つめは、人手不足が激しい医療福祉、小売業、飲食業など労働集約的で労働生産性が低く相対的に賃金が低水準の産業へ、女性や高齢者などの短時間労働者が移動していることです。
3つめは、平均労働時間が短くなっていることです。短時間労働者が増えていることだけでなく、企業活動が活発な中で残業時間が減少傾向にあることです。過労自殺があったD社の影響もあるでしょう。
そして最後に、企業の賃上げに対する慎重な姿勢です。グローバル競争が激化してビジネスモデルサイクルが大幅に短期化した現在では、10年先の姿をはっきり描くのは難しく固定費増になる賃上げには慎重になっています。労働者側も、賃上げが将来の人員整理につながりかねないと遠慮しています。

■物価上昇も伴っていない
賃金上昇だけでなく物価上昇も伴っていない不思議な景気拡大です。そもそも、景気拡大中と言っても、高度成長のころの景気拡大は高い山への上昇でしたが、今回の景気拡大はゆるやかな上昇で、日本の消費者物価は0%近傍で推移しています。日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、2%の物価上昇目標の達成時期について6度目の先送りをしました。消費者庁の6月の物価モニター調査でも、1年後の物価について「上昇する」と答えた割合が75.4%に達し、家計に物価上昇への警戒感が広がっています。
将来の雇用・収入への不安感や老後生活に備えるための節約志向などもあり、消費の改善による物価上昇への道のりは遠いといえます。人手不足の最大の理由も、生産年齢人口の激減であって、政府日銀の政策が成功しているのではないでしょう。
(米津 晋次/税理士)

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