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【インタビュー】「結局はローカルの勇気」鈴井貴之が北海道で語る演劇、そして生き方

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鈴井貴之によるプロジェクト・OOPARTS(オーパーツ)による舞台「天国への階段」が先月の東京公演からスタートした。孤独死の現場を清掃し、遺品を探す「特殊清掃員」をテーマにした作品で、永野宗典(ヨーロッパ企画)や畑中智行(キャラメルボックス)らが出演。東京に続き先週行われた大阪公演も大盛況と作品の評価が非常に高い中、今週11日(金・祝)から札幌公演が行われる。

見どころや舞台に対する思い、そして地元北海道の魅力について、札幌に戻ってきたばかりの鈴井貴之にうかがった。

■ 「こだわりを持つこと自体が僕はナンセンスだと思っています」

――OOPARTS第四弾の「天国への階段」ですが、どうしてこのテーマにされたんでしょうか?

孤独死の現場を後始末する特殊清掃員という職業が、題材としては映画やテレビドラマであまり触れられないんですよね。だからこそ、舞台で表現ができないかと思っていたんです。実は孤独死は交通事故死の3倍の年間3万人以上という現実があるのですが、にも関わらず社会の一つの事象として扱われることがあまりにも少ないのではないか、ここに現代社会が抱えているいろんな問題が詰まっているのではないかと思ったんです。

──確かに今までのOOPARTSとはちょっと違うといいますか、挑戦的という印象を受けました。

表現の自由と言いながら自主規制という名の下になかなか取り扱わない題材も増えていますが、社会には闇の部分というのはたくさんありますし、そういうものが共存して一つの社会として成り立っているものだと思っていますから。普段スポットライトの浴びることのない世界を皆さんの目の前に出して、いろんなことを感じてもらえればいいなと思います。

――「これがなかったらOOPARTSじゃない」というコンセプトってありますか?

そういうものは一切持っていないですね。逆にそういうこだわりを持つこと自体が、僕はナンセンスだと思っています。自分で芯を作っちゃうとそれにこだわって終始してしまうし、時代の変化に対応仕切れないと思うんですよね。節操なくていいと思っているんですよ。

だから(コンセプトは)強いて言えば、「その都度やりたいことをやる」。今回の孤独死というテーマに関しては重いテーマという印象を受けると思うのですが、東京と大阪で上演してきて、ありがたいことにお客様は爆笑に次ぐ爆笑、なんですよね。こういう題材だから真摯に生真面目に取り扱うのではなく、いかにコミカルに皆さんに笑っていただける作品に仕上げられるのか、というのが今回大きなチャレンジだったんです。

――東京と大阪の公演の反応って予想以上でしたか?

予想以上です。自分で言うのも何ですがここまでウケてここまで賞賛されるとは思っていなかったんです(笑)。大阪は4公演全て終演後も拍手が鳴り止まないスタンディングオベーション、という盛り上がりでした。僕も初めての経験だったので、ちょっとびっくりしましたね。実際にご来場いただいたお客さまやSNSなどで見ていても、素晴らしい面白い作品だと言っていただきまして。たぶん笑うだけでなく泣けるということを評価いただいているんだと思います。

――暗いテーマですが笑いもあり悲しさもあるという、感情が大きく揺り動かされるからかもしれませんね。

過去の三作と比べて振り幅は大きいですしね。笑いあり、そして謎解きありという要素がうまく歯車としてかみ合ったのかなという印象は、これまでのお客様の反応を見て感じてます。

――過去の公演でも札幌以外に東京や大阪で公演を行っていますが、お客さんのノリはそれぞれ違いますか?

違いますね。特に大阪はお笑いの本場というか、前のめりで「楽しんでやろう感」が強いですよね。札幌は地元なので「昔から知っているよ」という、お客さまというよりは知人や親戚が来ている感じで、舞台を冷静に見ているんだろうな思っていたんです。過去2作では。

でも実は昨年の公演でそれが払拭されたといいますか、札幌の受けが一番よかったんです。驚いたと同時に非常にうれしかったですね。おとなしいと思っていた札幌の反応が一番よく、スタンディングオベーションが起きる中で私は不覚にも泣きました。「涙なんか個人的なものなのだから流すな」と他の人には言っておきながら(笑)。地元でこんなに歓迎というか熱いコールをもらったというのは一番うれしかったですね。

■ 「結局はローカルの勇気、ですよね」

――出演者のコメントを読むと、OOPARTSはライブ感を大事にしていると思うんです。

いわゆる「ザ・演劇」といいますか、予定調和でセリフも全て台本に書かれているとおり覚えて段取りが決まっていて、こういう風にセリフを言って、というのが僕は嫌いなんですよ。その役柄になっていれば何が起きてもセリフにないことでも対応できるはずで、どれだけもらった役を演じきるかということが大切だと思っているので。そのために舞台セットを非常に不安定なものにして、「わざといつもと違うことが何か起きる」という要素を作り、その中で自分がどういう風にやるかという状況を作っているんですよね。

だから芝居で本番前に言っているのは「今日、感じてください」と。こういう風に段取り通りきっちりやりましょう、ではなく感じて臨機応変にどう対応していくかというところです。「普通の芝居はするな」って言いますので。そこが皆さんおっしゃるところのライブ感かもしれませんね。

――自分が完全に役柄になりきっていないと成立しない部分がありますよね。

これは昔から言っていることなのですが、僕は芝居が嫌いなんですよ(笑)。段取りばかりですし、ストーリーも決まってますし。それは当然ではあるのですが、でも何かわからないこと、不確定要素をやっぱり常に置いておきたいというか。舞台上の設定で「危ないぞ!気をつけろ」みたいなことがあっても実際は安全策を施してますから絶対危なくないんです。そういうのがつまらないんですよ。そこで計算できない要素を入れたときにどうなるか…。だから俳優さんたちは毎回疲れると思います(笑)。何があるかわからないから安心できないですからね。

――今までのやり方と違うわけですからね。

だから「止まるな」と言いますね。何か重要なセリフを言おうとするときに必ず相手やお客さんに向かって言おうとするのではなく、歩いて流しながら背中で言ってくれ、という演出にするんです。東京の役者さんにとっては既成概念と違う「北海道からやってきた鈴井貴之が、北海道でやっている方式」で取り組んでいただいているのがOOPARTSというユニットです。

今回北海道出身の東李苑(あずまりおん)がキャストに入ってますけれど、SKE48時代にミュージカルのような作品に出ただけなので、今回芝居をするというのは大変だったと思います。しかも正攻法ではないOOPARTSに来たのですからね。SKE48でのお芝居のとき演出家さんに言われたことと全部真逆のことを僕が言うという(笑)。だから逆に新鮮です、と言ってますね。そんな彼女の存在も今回の舞台では大きいと思います。

――東京とは違うやり方が全国でも通用するというのは、「水曜どうでしょう」(HTB)で手応えを得たのではないでしょうか。

ローカルはそれしか生き残る道はないんです。東京や大阪でやっていることに倣ってやったら規模とかで及ばないので、結局は東京のマネをしている、二番煎じ、って言われるだけのものしか作れないんですよね。ローカルは東京に比べると財力などいろんなものが乏しい、であればやっぱり方法論自体を変えていかないと戦えないんですよね。

結局はローカルの勇気、ですよね。僕はローカルの一番の強みは失敗できることだと思います。経験も財源もない、人材もいない。失敗しても当たり前なんですよ。だから一か八かで勝負できる。東京の場合は失敗できないんです。だって失敗したら代わりがいるから。だからアンパイを作るわけですよね。本当は120やりたくても7、80くらいのものでとどまる。でも北海道の場合は失敗できるのでいきなり120をやってみる、そういったことができるんですよね。正直我々もたくさんの失敗をしてきました(苦笑)。目を覆いたくなるような、「その話はしないで~」と言いたくなるくらいの恥ずかしい失敗はたくさんやってきてますけれど、その中の10本や20本に一本、突然変異的に「これ面白い」というようなものが生まれる可能性があるんです。

だから、奢った言い方をすると、僕は中央から新しいものは生まれてこないと思っているんです。一方ローカルからは突然変異的なものは生まれる可能性があるので、この北海道という土地に生涯こだわってモノを作っていきたいなと思いますね。

■ 「北海道で生活していると違う脳を使うんですよ」

――鈴井さんは北海道を離れることも多いですが、離れるからこそ気づく魅力ってありますか?

とにかく肌の空気感なんですよね。帰ってきて、新千歳空港に降りた瞬間から「違うね、やっぱりここ」って思うんです。新千歳空港からたいてい車に乗るのですが、札幌に行く高速道路を走っていて、恵庭とかの何にもない景色が広がっているのが好きなんですよね。何にもないし特別綺麗な光景というわけでもないのですが、でもなんかホッとします。

あと東京にいると思うのが、「北海道は空が広く見える」ということ。東京はビルがあったりで空が全然見えなくて。目とか耳とか肌で感じるもの全てが違う点で、北海道はいいなと改めて思いますね。

――私も新千歳空港に着くときの田園風景を見ていると、いいなあって思うんですよね。

ホッとできる場所ですよね。それはいろんなものが広がっている開放感なんじゃないですかね。これは東京の方から言われたのですが、その人にとっての北海道の風景って、札幌から北の石狩当別のあたりだって言うんです。なぜなら山がなく平野が広がっているからだと。僕なんかは、北海道の風景といえば層雲峡のような自然な山あいをイメージするのですが、その人に言わせるとそういう風景はどこにでもあると。山も何にもない、地平線も見える、という石狩当別の景色が北海道の広さを感じられる場所だと。僕らにしてみれば石狩当別は275号線が通っていて12号線が混んでときに通る、くらいの感覚なんですけれどね(笑)。

だから、北海道の魅力って有名なところだけではなく、そこに行く途中にもいいところがたくさんあることだと思うんです。富良野や美瑛の丘とかもきれいですが、たまたま車で深川の裏道を何の用事もなく走っていて「ここ、全然富良野とか美瑛と同じくらいきれいな景色じゃん」というところがあったりするんですよね。

――今回の札幌公演でキャストさんを連れて行くとすればどこですか?

ジンギスカンや海鮮を食べたいと言っているので、札幌の中心部に行くとは思うのですが、本当は石狩当別のように離れたところに連れて行きたいんですよね。僕は札幌から一時間ほどの赤平市出身で、そこで生活しているので連れて行きたかったんですが、今回スケジュールが合わなくて。

――鈴井さんはご自宅にフットサル場を作られたそうですが、北海道日本ハムの栗山監督もご自宅のある栗山町に野球場を作ったり、自分の趣味を家の敷地に作っちゃう人が多い気がします。

それは、北海道だと可能なんですよ。東京近郊でやろうと思ってもお金の問題も含めて難しいですけれど北海道だったら全然やれちゃうんです。広大な土地が安く手に入るので現実的にできるんですよね。そこが北海道の楽しみでもあるというか。それだけ広い土地があれば「ここにこんな小屋作って」とか「ここにこういう畑を」ということができてしまう。しかも自分で重機使って耕したり、自分でできる限りのことは自分でやってますから。

――そう考えると北海道は創作意欲のわきやすい場所かもしれませんね。

そうです。やっぱり生活していく上でも頭を使うんですよ。いろんなものがなかったりするけれど、じゃあそれを自分で作ろう、とかここにこういうスペースを確保しようとか、普段考えないようなことを考えるんですよね。今年はこの「天国への階段」のために畑を一切やらなかったので、雑草だらけになった畑をこの秋にきれいにしようと考えています。しかも畑は傾斜地なので、三段の段々畑にするという重要ミッションがありまして(笑)。9月はそれをやらなきゃな、と、全然違う次元のことを考えてますけれど、でもそれがいいのかもしれないですね。仕事とは違う脳を使うわけですからね。

――違う脳を使う北海道だけに札幌公演もまた違った舞台になるかもしれませんね。

東京、大阪と公演をやってきてどんどんいい感じに進化しているので、いい形で地元の方たちにご覧いただけると思います。一人でも多くの北海道の方にご覧いただきたいという気持ちが強いです。やっぱり札幌公演は一番力が入りますね。

先ほどお話ししたとおり前回は札幌が一番盛り上がる反応をいただいて、とてもうれしかった思い出があるものですから、今回もそれを超えるような盛り上がりに、と思ってます。

【北海道ウォーカー編集部】

https://news.walkerplus.com/article/117400/

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