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まねてみたけど

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 【我満晴朗のこう見えても新人類】7月8日に東京都内で行われた元NHKアナウンサー、土門正夫さんの「お別れの会」に出席した。

 会にはプロ野球から星野仙一、山本浩二、高田繁の各氏、男子バレーボールでは嶋岡健治氏、男子体操からは塚原光男氏といった1972年ミュンヘン五輪の金メダリストを含め、かつての名選手が集結。NHKのOBでは磯村尚徳、山川静夫両氏の姿もあった。昭和を代表するビッグネームばかり。筆者は会場の片隅でひたすら縮こまるばかりだった。

 端っこにいたおかげで、いいものを見せてもらった。机上に展示されていた土門さんのノート集。1978年夏の高校野球決勝「PL学園―高知商」のスコアもある。「逆転のPL」の呼称を決定づけた名試合。そうか、あの伝説の一戦も担当していたんだ。

 マラソン中継に備えて詳細を描き込んだ手製のコース図もあった。拠点ごとに放送で話すことになるエピソードめいたデータが記入されている。驚くべきは、その筆跡の美しさ。自分だけが読めればいいという身勝手な意識は一切なかったのだろう。

 思わず目が止まったのはミュンヘン五輪時の筆記。以下一部を抜粋すると…。

 <大会11日目

 9/5 男子バレーボール予選最終戦 西独戦

 6時半起床

 8時半 サブコートで練習中・松平監督「選手村でテロ事件があったようだ」

 すぐ記者にTEL→日本の夜7時のニュースに第1報>

 生々しい記述の連続。五輪史上最も悲惨な事件が発生し、情報が入り乱れていたはずなのに、起こった異変を落ち着いた表現でつづっている。小まめに「書く」という行為を通じ、複雑な事象を整理していたのではないかと想像する。当意即妙のコメントで数知れぬ名実況を生み出した背景には、こんな地道な積み重ねがあったと思うと、素直に頭が下がる。

 翻ってわが身。メモを取ることはあっても、取材対象の大会が終了した時点で破棄するから、手元には何も残らない。最近はネットでいつでもどこでも情報にリーチできるし、レコーダーという便利な道具に頼りっぱなしで、メモする習慣すらなくなった。

 このままでは劣化が進むばかりと一念発起してペンを握ってはみたが、大部分が殴り書き。他人ばかりでなく、書いた自分も読めない悪筆だ。

 土門さんの域にはとても及びそうにない。 (専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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