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『酒とつまみ』創刊メンバー・大竹聡氏の「憧れの朝酒」とは

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 酒を呑むといえば、たいてい夜のことで、朝や昼に呑むときは「朝酒」「昼酒」と特別な呼ばれかたをする。ミニコミ誌『酒とつまみ』創刊メンバーでフリーライターの大竹聡氏による週刊ポストの連載『酒でも呑むか』から、魅力的な「朝酒」についてお届けする。

* * *
 世の中には、できるなら朝から酒を飲みてえと言って憚らない人がいらっしゃいます。中には、私の酔っ払い生活が長いことから、きっとあなたもそうでしょうと決め込んで朝酒に誘う人がいる。

けれど私の場合、朝はたいてい、まだ大いに酔っ払っているか、ド二日酔いの真っ最中であるから、朝一から酒を飲もうということには、なかなか、ならない。

以前、ある雑誌から、朝酒に始まって1日中ハシゴしてくれという依頼があり、できまっかいなそんなこと、と即座に断った。

後で聞いたことだけれど、その企画、ご存じ吉田類さんと『東京煮込み横丁評判記』などの著作のある坂崎重盛さんの、両巨頭が引き受けたという。ちなみにその日、お二人のハシゴ酒は15軒に及んだという。かないまへんな。

私が朝酒をするのは旅先が多い。旅館で飲む。これもいい。酒蔵の取材に出向いて飲む。これもいい。ほかには、朝から飲める定食屋でハムエッグなんか頼んでビールの小瓶を1本、なんてのもいい。けれども、もっともしぶいと思うのは、酒屋の酒だ。角打ち、というやつである。

角打ちは関西や北九州が有名だけれど、その昔、東京にもあった。かれこれ30年以上前、西新宿の小さな出版社の使い走りをしていたが、その会社の入る雑居ビルの近くに一軒の酒屋があって、店先で酒を飲ませた。

ビールのケースなんか、勝手に出してきて腰掛けて飲むサラリーマンもいたように記憶する。

つまみは乾きものと缶詰。ホンマものの酒好きはカップ酒をぐいっと飲むのだなと、ちょっと飲めば真っ赤になる私などは、ビビりながら店の端っこでビールを飲んでいた。私にも、紅顔の美少年であった時代はあるのです。

北九州では、仕事で何度も足を運ぶうちに、行けば必ず寄りたい角打ちの何軒かができた。

ホテルの朝食を食べずに街へ出て、酒屋へ入る。簡単な酒肴とビールをもらう。そこには、朝から地元の客の姿があって、黙って1杯飲み、あるいは2杯飲み、すっと帰る。長居をする人はいない。

たいてい、そこそこにお歳を召している。その年齢まで朝から飲んで無事に生きてこられたのですね、と思えば、一緒にいるだけで心強い気持ちになってくる。なんとも、ありがたい一瞬、こういう朝酒が私は好きです。

浅草出身の編集者から聞いたのは地元の鳶の親方のことだ。毎朝、現場へ出る前に酒屋に寄り、日本酒を1杯、くいっとやる。一瞬で飲み干す。さあ、行ってくらあ。

気付けの1杯。朝酒飲むならこうでなくちゃ、という憧れの1杯であります。

●1963年東京生まれ。早大第二文学部卒。出版社勤務を経てフリーライターに。2002年仲間と共にミニコミ誌『酒とつまみ』を創刊。著書に『酒呑まれ』『多摩川飲み下り』(ちくま文庫)、『ぶらり昼酒・散歩酒』(光文社文庫)、『ぜんぜん酔ってません』『まだまだ酔ってません』『それでも酔ってません』小説『レモンサワー』(いずれも双葉文庫)、『五〇年酒場へ行こう』(新潮社)などがある。

※週刊ポスト2017年4月28日号

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