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なぜ男は風俗に行くのか。漫画家・鳥飼茜が考える

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『おんなのいえ』『先生の白い嘘』『地獄のガールフレンド』など、女性が直面する問題を描いて高い評価と支持を集める漫画家・鳥飼茜さんが、昨年10月から『週刊SPA!』(以下、SPA!)で「ロマンス暴風域」を好評連載中です。

物語は、仕事も恋愛もうまくいかず疎外感を味わう主人公・サトミンが、店で出会った風俗嬢に運命を感じて恋に落ちるストーリー。しかしそこは一筋縄ではいかないのが鳥飼作品、男性読者に都合のいい展開にはなりません。『週刊SPA!』2月21日発売号に掲載の第11話でも、男女の風俗に対する認識の違いを巡るやりとりが描かれています。

これまで女性視点の作品が多かった鳥飼さんが、なぜ男性視点で風俗を題材にした連載をはじめたのか。自身の心境の変化や、男の生きづらさへの考え方を語ってもらいました。

◆男の人の生きづらさが見えてくるようになった

――現在、『週刊SPA!』で連載中の「ロマンス暴風域」は、風俗嬢に“ガチ恋”してしまうサトミンという男性が主人公です。なぜ風俗を題材にした漫画を描こうと思ったんですか?

鳥飼:もともと、風俗で働く女の人たちの事情や気持ちをすごく知りたい時期があって、ずっと風俗嬢の漫画が描きたかったんですよ。

――どうしてそんなに風俗に興味が……?

鳥飼:私だったら、自分の好意や欲求と無関係の見ず知らずの“男性”の射精を自分の体で受け止めるというのは、つらいし苦しい。すごく怖い。でも、自分と同じ女の人の中には、お金のために割り切っている人もいれば、その仕事にやりがいを感じている人もいるでしょうし。それを完全に他人事とは思いたくなくて。

――それが今回、風俗嬢ではなく、風俗を利用する男性視点からの物語になったのはどうしてでしょう。

鳥飼:自分の周りの男友達や男性編集者に、「どういう気持ちで風俗に行くの?」「風俗嬢と私と、どう気持ちを切り替えて接しているの?」って聞いて回ったんですよ。みんな、苦笑いしながらもけっこう答えてくれて(笑)。そしたら、風俗に対する私の印象が少し変わっていったんですよね。

――それは、どんなふうに変わったんですか?

鳥飼:それまでは、「女は金で買える」という男の人の感覚に抵抗感があって、女の人の“性”がただただ売り物にされている場所だと思ってたんですけど。話を聞くうちに、どうやら私が思っている以上に男の人は女の人に対して、母親といるような安心感を求めていて、甘えたい・癒されたい・救われたいと思ってるんだなって。

――風俗嬢にも性欲だけでなく、そういうものを求めているってことですか?

鳥飼:ええ、女の人に嫌われるのをとにかく怖がっていて、決して自分を傷つけてこない保証がある女の人を欲しがっている。風俗は、そういう男の人にとっての避難所でもあるんだろうとすごく思いました。と同時に、男性の不自由さや生きづらさもだんだん見えてくるようになって……。

――具体的には、どんな生きづらさですか?

鳥飼:男は働いて一定の年収があって当たり前、女をリードできて当たり前、みたいな社会からの見えない圧力がたくさんあって、仕事を失ったり、今いる自分の立ち位置を失うことをすごく怖がってるでしょう? そこから弾かれることでみじめに感じている男性も多いのでは、って。

――そう思うようになったのは、鳥飼さん自身の考え方に変化があったんでしょうか。

鳥飼:そうですね。以前は、女だけが損をしていて、男の人はすごくのうのうと生きているように見えたんですよ。だから、『先生の白い嘘』や『地獄のガールフレンド』のような漫画でも、ずっと女性の問題に目を向けてきたんですけど。でも、自分の子供も男の子だし、男の生きづらさの問題を放っておいたらまずいことになるなって。

◆受け入れがたいことほど、共感できる部分を見つけたい

――「ロマンス暴風域」のサトミンも、正規教員の仕事にはありつけず、婚活パーティーでもスペックで除外され、社会から弾かれた感覚を持っている男性です。そういう男の生きづらさを描いてみようと……?

鳥飼:風俗にのめり込む男性の中にも、共感できる気持ちを見つけたいと思ったんです。個人的には、自分の彼氏や父親が風俗に通っていたら、正直受け入れられない。でも、自分の本音はひとまず置いといて、一旦そっち側の気持ちに寄り添ってみようって。

――いろんな考えの人に寛容でありたいとか、そういうことですか?

鳥飼:いや、偏見をなくしたいとか、寛容さをアピールしたいとかじゃなくて。私自身は、風俗行く人にはまったく不寛容ですから(笑)。でも、私は漫画を描くことを通じて、“自分が受け入れがたいことの中に、どこまで共感できる部分を見つけられるか”というのを、いつもどこかで試したいんだと思います。たとえば、『先生の白い嘘』に早藤という登場人物が出てくるんですけど。

――早藤は、処女ばかりを狙ってレイプし、自分の婚約者の友だちにも手を出すキャラクターですね。

鳥飼:彼は、私にとって一番イヤだし一番怖い存在なんだけど、そういうヤツの中にも、どこか自分が寄り添える部分が絶対あると思って描いているんですよ。なんでそんなことしたいのか、自分でもよくわかんないんですけど。風俗に通う男性についても、それに近いことをもう少しマイルドにできないかなと思ったんです。

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ここまで、男性の生きづらさと「風俗」というものへの見方の変化を語ってくれた鳥飼さん。なぜ「受け入れられない」ことの中にさえ共感を探そうとするのか、次回その挑戦的な試みの奥底にあるものにさらに迫りたいと思います。

<取材・文/福田フクスケ 撮影/スギゾー。>


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